東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

好きにしたらいいと言って柔らかく微笑む師匠に一歩下がって礼を取り、仁は道場に向かった。

日常から離れて、見つめ直す時間が必要なのは大毅だけじゃない。自分も同じだ。

彼のようにいま問題を抱えているというわけではないが、時々こうした時間を持たないと、自分がいま何をしているのかわからなくなる。
何の為に毎日を忙しく走り回っているのかと聞かれれば、生きるためと答えるだろう。では、生きるとはどういうことなのか。

大自然の中、風が吹き抜ける道場で、そんな哲学的な答えのない自問自答を繰り返し、汗を流す時間が自分には必要なのだ。

そんなことを思いながら、一旦外に出た仁は駿に電話を掛けた。


呼び出し音を二つ聞いたところで彼は電話に出た。連絡を待ちかねていたのかもしれない。

週末には必ず連絡をいれるという大毅の言付けを伝えると『申し訳ないね、仁さん』と力のない声が答える。