廊下からパタパタと足音が聞こえて、慌ただしく叶星が入ってくる。

「電話は繋がらなかったですけど、留守電にはメッセージをいれておきました」

叶星は持ってきたスマートホンの充電を始めたが。
彼らの視線を感じて、恥ずかしそうに言った。
「実は、ずっと電源を切ったままだったので……」

電話の電源を落として連絡手段を絶つ。身を隠すとはそういうことだ。

この子はどんな思いで電源を落としたのだろう。と、黒崎も仁も感慨深げにスマートホンを見つめた。

「そうか。じゃあ電話待ちだ」

「掛かってくるでしょうか」

「あるよ。必ずある、西ノ宮さんも大変だったね」
仁は精一杯微笑みかけた。

恋人の母親に別れを促されるというのは、どう考えても辛いことには違いない。

「いえ、私は大丈夫です」
言いながら叶星はスマートホンをジッと見つめる。