小百合とは、東堂夫人のことだ。
「え? 今日が見合いの日だったんですか?」
と聞いたのは仁。
黒崎も見合いがあることは聞いてはいたが。具体的日時は知らなかった。
「ああ。もっとも大毅はずっと見合いはしないと言っていたがね」
「一応言っておくけど、そもそもお見合いっていうのは母が大袈裟に言っただけで、よくよく聞いてみたら、今日は涼花流のお茶会らしいよ」
そう追加したのは駿だ。
なるほど、さっき見た夫人が和服姿だったのはそういうことかと黒崎は納得する。
「どうやら大毅が付き合っている女の子に、小百合が会いに行ったらしい。大毅と別れてほしいと彼女に言ったそうだ。それで彼女が姿を消した」
「彼女って、西ノ宮さんのことですか?」
驚いたのは黒崎だ。
「ああ、そんな名前だったかな。派遣で『兎う堂』に来ていた女性らしいね」
「西ノ宮さんが、姿を消した?」



