いきなりの質問にそれほど驚く様子をみせずに、仁は肩をすくめる。
「なんだか怒っていましたよ。見合いの事を雑誌で見たとか言って。でも、消えちゃったってどういうことですか? マンションにいないとか?」
「ああ、いない。さようならとか手紙を残して消えた。その雑誌って、なんの事だ?」
仁は立ち上がって店の奥から持ってきた雑誌を開いて、問題の記事を見せた。
「大毅さんからもらったチケットで行ったエステサロンで見たらしいですよ。気になったんで、買って読んでみたんですけど、なんだかちょっと」
大毅は記事をジッと見つめた。
涼花流の娘は、片手間にモデルのようなことをしている。
次期家元ということを売りにしてはいるものの、モデルとしてはさほど有名でもない。なので記事も小さいものだった。
『涼花流次期家元兼モデルの涼子 御曹司と結婚か』
一字一句見逃さないように読んだが、どんなに読んだところで御曹司についての具体的な記述はない。
一部上場企業の重役とあるが、それだけだ。
「なんだこれ、こんなんじゃ相手が誰だかわからないだろう?」
「ですよね、俺もそれが気にはなって」



