今更慌てたところで仕方がない。
ひどまず仕事を終わらせ、居ないだろうと思いながらマンションに来てみたのだった。

念の為ロビーで呼び鈴を鳴らしたが反応はない。
彼女はここにはもう帰って来ないということなのだろう。

「なにが、さようならだ」
そう独りごちて舌を打ち、車に戻って向かった先は仁の店。

出張中に何があったのか。彼ならば何か知っているかもしれないと思った。



「あれ? 出張中じゃなかったんですか」

入るなり、大毅は憮然としてカウンターにいた仁の隣に座った。
「予定が変わって今日帰ったんだ。なあ仁、叶星が消えた。何か聞いてないか」