手紙はエレベーターのなかで読んだ。

『お帰りなさい、お疲れさまでした。直接ねぎらってあげられなくて、ちょっと残念ですが、お会いしないほうがいいと思って手紙を書きました。
派遣社員の契約と一緒に、副社長との関係も終わりにしようと思います。
なぜかというと、やっぱり無理だと思ったからです。
昨日引っ越しをしましたのでマンションにもおりません。二度とお会いすることはないでしょう。実家にも心配かけたくないので、なにも言わずに引っ越しをしました。
今まで本当にありがとうございました。
さようなら。お元気で。 西ノ宮叶星』

丁寧に直筆で書かれた手紙だった。

縦書きで。ひと文字ひと文字が流れるように綺麗な字。
書かれている内容も忘れ、あいつはこんなにきれいな字を書くのかと大毅は感心した。