東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

「これ、あげる。ここは俺の店だ。困ったことがあったら、この名刺を持って会いにおいで、もしいなければバーテンに俺に話があると伝えてくれればいいから」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあ、あと少しだね。仕事がんばって」

「はい。精一杯がんばります」



廊下を進む氷室仁が、営業部の社員と立ち話をはじめたのを見届けて、叶星もその場を離れた。

――ついに。氷室さんの耳にまで届いてしまった。

いま、このフロアのあちらこちらの目が、いまも自分の様子を伺っているのだろう。
そう思うと、叶星は恥ずかしさでいたたまれなくなった。

リサーチに協力。
聞かれたらそう答えようと思ったけれど、果たして聞かれることはあるのだろうか。

いまのところ不気味なほど、誰もなにも聞いてはこない。