東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

つらつらとそんなことを思い出すうち、車は『兎う堂』に到着した。

余裕を持って来たので、総務部長との約束の時間までにまだ三十分の余裕がある。
先に西ノ宮叶星に契約延長なしの確認を取ろうかと思ったが、それよりもと、受付で聞いてみることにした。

「いらっしゃいませ」
「副社長はいる? ちなみにアポはとっていません」

何度か訪ねているので受付嬢とは顔なじみである。

「はい。お待ちください」
満面に笑みを浮かべた彼女は、迷うことなく内線をかけた。

電話をきると、「執務室にどうぞ」と左手を上げ、あらためてにっこりと微笑む。

visitorと書かれた派手なストラップを首から下げて警備員の前を通り過ぎ、仁はエレベーターに乗った。


オフィスには、それぞれ違った空気や匂いがある。
『兎う堂』に感じるそれは、清潔感のある空気と、微かに漂う爽やかな香り。