氷室仁(ひむろ じん)は面接相手に微笑みかけたあと、履歴書に目を落とした。

西ノ宮叶星(にしのみや かほ)、二十五歳。

大学を卒業したのち、大手広告代理店に就職。二年で退職。
その後、半年近く間を置いて、氷室仁が専務を務めるここ人材派遣会社『ヒムロス』に登録にきた。

履歴書から視線を上げた仁は、あらためて向かいに座る彼女と視線を合わせる。

物怖じする様子も気負う様子もみせず、淡々と見つめ返してくる彼女は、履歴書に貼られた写真に写るとおりの美人だった。

思わずフッと、仁は口角を上げた。
さも満足そうに。


『ヒムロス』に登録するにはまず電話連絡を経て、面接より先に履歴書を送ってもらっている。

履歴書が届いてから再び電話連絡をとり、大まかな希望を聞き、その後はじめて面接となる。
順番の違いこそあれ、ここまでは他の人材派遣会社と変わらない。

『ヒムロス』が違うのはその後だ。