ため息をつきながらレインコートを脱いで袋にしまい込み、エレベーターの前に立っていると、チンと音を立ててエレベーターが開いた。
地下の駐車場から上がってきた人の足元が見える。
「おはようございます」
隣にいる社員の声に顔を上げると。
――あっ!
それは彼。東堂副社長。
叶星も慌てて頭を下げて、中に入った。
ところが。
「――え?」
叶星以外は誰もエレベーターに乗らず、扉は閉まっていく。
「え、ええ? あの」
「おはよう」
「あ、お、おはよう、ございますって、違うでしょ! なんですか今の。どう考えても……」
どう考えても、ふたりきりにしようと忖度された。
金曜日のことが、早くも社内中の噂になっているってことなんじゃ?



