社会に出て仕事をはじめてからは、心にも時間にもそんな余裕はなかった。
がむしゃらに毎日を乗り越えていくのが精一杯で、先輩たちにおいて行かれないよう必死で、恋はますます遠退いていった。
現実から逃げたくなると、優しい恋人や夫がいないことを嘆いたけれど、それはただの逃げで恋じゃない。
だから、恋愛については赤ん坊のようなもの。
そんな初心者が、副社長のように余裕ある大人の誘惑に勝てるはずがない。
スコーンと深いどこかに落ちてしまった気分だ。
そこには彼しかいなくて、彼のことしか考えられないという恋に満ちた世界に。
――参ったなぁ。
ため息をつきながら、叶星は『兎う堂』のビルを見上げるようにして歩いた。
残すところ今日からあと二週間、ずっとこんなことを考えながらこのビルに通勤するのだろうか。
入る前に立ち止まり、傘を畳みながら叶星は考えた。
たった三ヶ月の派遣でこんなことになってしまうとは、もちろん予想もしていなかった。
がむしゃらに毎日を乗り越えていくのが精一杯で、先輩たちにおいて行かれないよう必死で、恋はますます遠退いていった。
現実から逃げたくなると、優しい恋人や夫がいないことを嘆いたけれど、それはただの逃げで恋じゃない。
だから、恋愛については赤ん坊のようなもの。
そんな初心者が、副社長のように余裕ある大人の誘惑に勝てるはずがない。
スコーンと深いどこかに落ちてしまった気分だ。
そこには彼しかいなくて、彼のことしか考えられないという恋に満ちた世界に。
――参ったなぁ。
ため息をつきながら、叶星は『兎う堂』のビルを見上げるようにして歩いた。
残すところ今日からあと二週間、ずっとこんなことを考えながらこのビルに通勤するのだろうか。
入る前に立ち止まり、傘を畳みながら叶星は考えた。
たった三ヶ月の派遣でこんなことになってしまうとは、もちろん予想もしていなかった。



