どうしようと考えながら意味もなく卓上カレンダーを手に取った。

あと半月とちょっと。この席に座るのももう少し。
そうしたら副社長ともさようならだ。

『続きは今夜……』
ふいに思い出して耳の後ろが熱くなる。

――何をやっているの? しっかりして。今夜に続きがあっていいわけがないでしょう?

帰らなきゃ。慌ててそう思いながら、「おさきに失礼しま」まで言ったとき、先を遮る声がした。


「じゃあ行くか」
ギョッとして振り返るとそこにいたのは東堂副社長。

「えっ?!」

いつの間に後ろにいたのか。
声をかけただけで、彼はもう背中を向けてスタスタと歩きだしている。

仰天しているのは叶星だけじゃない。
ワコさんや女性たちは目を丸くして口をポカンと開けているし、部長も固まっている。

「ふ、副社長?」
廊下に出るところで立ち止まった副社長は振り返った。

「ほら、早く。予約してあるんだから」