東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

そういえば、停電するとエレベーターも使えないのか。
そんなことを思っているとニヤニヤと意味深に目を細めるワコさんが、「お疲れさま」という。

途端に羞恥心に襲われた叶星は「な、なにか?」とたじろいだ。
倉庫部屋で何をしていたのかワコさんが知っているはずはないのに、それでもドキドキと落ち着かない。

「ん? 別に。まだ雨が降っているから気を付けて帰ってね」

時計を見れば、既に帰る時間になっていた。

「あ、ワコさんはまだ帰らないんですか?」

「私はもう少しやっていくわ」

「そうですか、お疲れさまです」

不自然なまでに愛想笑いを浮かべながらノートパソコンを立ち上げた。

出勤簿に入力をして、あとはすることが浮かばずそっとノートパソコンを閉じる。

――さてと。
バッグを手にして、あとは挨拶をして帰るだけ。

『席で待っていて』
彼にはそう言われたけれど……。