東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

幽霊の髪は真ん中分けのストレートらしいとか、靴は血のように赤いらしいとか。

野呂は、仕事の話だとろくな説明もしないくせに、どうでもいい余計なことには口が軽い。
なにしろあのいい加減な男の言うことなので真偽の程はわからないが、それでなくても今日のようにどんよりと曇っている日は尚更、嫌な感じがする。

叶星はホラー映画が大の苦手なのだ。
幽霊の話を聞いたり怖いドラマを見たあとは、髪を洗う時に目を瞑ることすら恐怖を覚えるし、鏡を見ることもできない。
思い出さなければいいのものを、またしても野呂の話を思い出してしまった。
一度思い出してしまうと、もうだめだ。
物置部屋の静けさが上から大きな塊となって押し寄せてきて、キーンという音が耳鳴りなのか気のせいなのかわからなくなってくる。

ガタッ。
「ひゃ」
荷物が崩れた音だった。
「あと少し」と、自分を励ますように声をあげた。

と、その時。