東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

それはこの際いいとして。
とにかくそういうわけなので金曜日の約束はしていない。

昨日も今日も、副社長からは梨の礫だし大丈夫。

あれこれそんなことを考えながらほとんどの段ボールを並べ終わり、「はぁ」と、大きくため息をつくと、倉庫部屋がシーンと静まり返った。

ここには他の部屋にあるような大きな窓がない。

壁の上の方に、叶星には手を伸ばしても届かないところに横長の窓があるだけなので、昼間でも電気をつけなければ暗く、電気をつけても閉塞感が増す。

その細い窓を見上げると、日の長いこの時間にしては随分暗かった。

雨が降るのだろう。
ふいにゾクっと寒気がした。

大きなオフィスビルには、怪談話のひとつやふたつある。
『出るらしいよ。女の幽霊が棚の隙間から覗いているんだって。叶星ちゃんも気をつけて』
そう言っていたのは野呂だ。