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広報部には、イベントで使った小物やらをしまっておくための専用の倉庫がある。
金曜日の午後遅く。
叶星はそこで片付けをしていた。
「ハート型バルーン大。はい、オッケー」
中身を確認しながらマジックで段ボールに記入。
「次、ハートの小」
赤いハートのバルーンを見ていると、その真ん中になにかが見えるような気がした。
それは人の影?
――副社長?
『ふざけた奴だ』
――やめてぇ!
慌ててブルブルと首を振り、妄想を打ち消す。
キスくらい、どうってことはないじゃない。
そう思うのに気がつけばまた思い出していて、頭の中を占領してしまう、副社長のキス。
――そもそも。
あの人は、どうして私にかまうの?
この前の週末は、突然ジムに現れた。
そして水曜日。またしても彼は突然現れた。



