東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18



そんなことを思ううち、叶星は自分の唇を触っていることに気づいた。

「うわっ」
慌てて口から手を離す。

「おっ、どうした?」
ギョとしたように振り返ったのはワコさん。

「す、すみません、何でもないです」
エヘヘと笑って誤魔化した。

「出かける準備しておいてね、十時にはでるわよ」

「わかりました」

ノートパソコンを閉じながら、ふと思う。

私が副社長を好きになったところで、手酷く突き放すつもりとか?

そうだ。間違いない、きっとそうに違いない。

なにしろ彼には前科がある。
パーティで言った冗談。『俺と付き合わないか』と言って大笑いした彼。

確信めいてくると腹が立ってきた。

――酷い!

勢いよく立ち上がろうとするとピキーンと太ももが痛んだ。

「イタタ」

「え? どうしたの? もしかしてまだ筋肉痛? 長くない? 若いのに」

「はい……。スポーツクラブの鬼コーチが、鬼過ぎて」

足をさすりながら、叶星は眉をひそめて口をへの字に曲げた。

――もお! なんなのよ。