***
――昨夜のことは、桃花が知ったら驚くだろうな。
ぼんやりとモニターを見つめながら叶星は思った。
でも桃花にはもう新しい恋人がいる。だから報告をする必要はない。
数日前のことだ。桃花と恋人が頬を寄せ合っている写真と共に『十歳年上なんだけどね、IT企業の役員なのよ』とSNSでその報告を聞いたばかりである。
彼女はいま、新しい恋に夢中だ。
桃花から聞いた話に憤慨して副社長に失礼な態度をとって。それがきっかけになり、気がつけば副社長とふたりで夕食をとり……。
発端になった本人には、もうどうでもいい過去の話になっているのにと思うと、叶星の胸はなんとも表現のしようがない複雑な気持ちに揺れる。
『猫を飼ったら見せてやるよ』
猫を飼う飼わないの話で盛り上がり、マンションの前まで送ってくれたあと、副社長はそう言った気がする。



