東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18


『兎う堂』に入社が決まった時。黒崎は東堂邸へ挨拶に赴いている。

その時から幾度となく夫人とは顔を合わせているが、その度にまるで背中を鞭で打たれたように緊張してしまう。
大毅の母だけあって、驚くほど美しい夫人だが、優しげな微笑みの中に笑っていない何かを感じるのだ。

武道全般に心得のある黒崎の使い慣れた言葉でいうならば、只者ではない剛の者。

夫人と最後に顔を合わせたのはひと月ほど前。実家に帰っていた大毅に会いに行き、そのまま夕食に招かれた。

大毅が電話で席を外した時。
『大毅に早く結婚してほしいの』
夫人は黒崎にそう言った。

『私が選んでくる子に興味を示さないし、見合いの席にすら着こうとしない。かと言って誰かを連れて来るわけでもないし。言えば"そのうち、そのうち"って、そればっかり。一体なにを考えているのかしら』


黒崎が見たところ、彼の頭の中にあるだろうこの先数年の予定に、結婚の二文字はない。