東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

貧乏とまではいかないまでもさほど裕福とはいえない暮らしの中で、五歳違いの兄も叶星も大学は奨学金を得て通ったようだ。

兄は大学卒業後一度も定職につくことはなく、先物取引などでそこそこの利益を出し世界中を旅していたらしい。
叶星は都内の国立大学を卒業後、大手広告代理店に勤めている。そこでの評判は概ね良い。真面目で意欲を持って働いていたらしい。

ところが今から半年近く前、彼らの生活に変化が起きる。

まず宝くじを当てた彼女が仕事を辞めた。
その少しあとに兄は友人と共に投資会社を起業。事業は成功し、つい最近シンガポールを拠点に移し両親を呼び寄せた。
一方退職した叶星はしばらく日本を離れている。半年後再び姿を現すと今のマンションに引っ越しをして、派遣会社に登録した。

彼ら個人にどれほどの資産があるのかはわからないが、少なくとも兄の会社は順調で、どこにも黒い影は見当たらないということだった。