勧められるまま美顔器や化粧品を購入すれば、札束がポンポンと消えていくだろう。それがわかっているので桃花も誘わないし、時々サービス券を渡すだけに留まっている。

「どう? 久しぶりの都内は。半年も田舎にいると随分違うんじゃない?」
「うん。歩いていて人にぶつかりそうになっちゃう」
アハハと笑いながら、心がチクリと痛んだ。

「はい、お土産」
「ありがと」
アンテナショップで買った、ありきたりのお菓子を渡しながら、ごめんねと叶星は心で謝った。

桃花には半年間、田舎の親戚のところいたことにしているが、それは嘘だ。

UVカットのローションを丹念に塗ったおかげで日焼けは免れているが、実はずっとハワイにいた。

ハワイの貸別荘で家政婦を雇い、のんびりとした優雅な暮らしを満喫していたなんて言ったら、桃花は信じるだろうか? 信じてくれるとして、なにも聞かずにいてくれるだろうか?