第四章 優しい花が枯れていく。

〉〉成瀬君。明日空いてる?もしよかったらどっかいかない?
佐倉からこんなメールが来た。僕は一瞬だけ迷ったが承諾のメールを返した。佐倉とは修学旅行以来話していなかったし、あのままの佐倉はなんだか死にそうな感じがしたから少し気にかけていたのだ。
〉〉じゃあいつもの駅で。今回は待ってるから。あと着替え持ってきて。内容は聞かないこと。9時30分に集合。
??と頭の中で浮かんだが、準備をした。とりあえず一着くらいでいいか。それからリュックにお金、スマホなど必要最低限のものを詰め込んだ。なんだか準備していると少し楽しみになっていた。土曜日にしては早いなと思ったので早めに寝ることにした。
〉〉ああ。わかったよ。じゃあ明日。
そして、その翌日。僕は駅に9時20分についた。が、彼女はまだ来ていなかった。待っているとか言ったくせにはいなかった。すると、僕がついて1分後くらいに寝むそうにした彼女がやってきた。
「ごーめん。遅れちゃったね。それじゃあはい。」
「集合時間30分だろ?別に遅れてないしそんなの気にしない。って何?これ。」
「ん?これはね電子マネーカードっていってあの改札のところに・・・」
「いやそれくらいは知ってるけど。なんでそんなの僕に渡すのってこと。」
「それはもうどこか行くからに決まってるでしょ。というわけで、はい。」
「いや。そんなの受け取れないよ。さすがに。スマホにチャージするか切符買ってくるから待ってて。」
「いいから。私がいいっていうんだから。はい。どーぞ。」
その後、佐倉はなんだかんだ言ってきたので、僕はしぶしぶ受け取ったが、駅の改札を通った時このカードに入っていた金額は1万円という表示が出た。
「絶対返すから・・。」
と、僕はそれだけしか言えなかった。
「いやー。楽しみだね。お好み焼きでも食べよっかなぁー。」
「修学旅行忘れたの?なんでもっかい広島にいくんだよ・・・。てか遠いし。」
「まあいいでしょ。成瀬君ともう一回改めて行きたかったしね。」
僕たちは新幹線に揺られていた。最初は、新幹線で隣県でもいくのかと思ったがなんと地方まで通り越して、つい2週間前にいったところにもう一回いこうとしていた。
「てかさぁ。遠出するなら言ってくれないかな・・・。帰るの遅くなるって連絡しないといけないから。」
「じゃあ今日は友達の家に泊まるって言ってよ。帰るのは明日になるって。」
僕は耳を疑った。帰るのは明日になる?佐倉は泊まろうとしているのか?そのまさかだった。
「はぁ?マジで言ってる?」
「マジで言ってる。お手伝いでしょ。お金のことは心配いらないから。おねがいだよっ。ね?もうすぐ死んじゃう少女のお願いに付き合ってよ。」
僕はしぶしぶ親にメールを送ったが、これが最悪なことに了解の返信が親から来た。おそらく僕は普段、友達と遊んだりしないから親もめずらしいと思って承諾したのだろう。
そして佐倉はぐっすりと寝てしまった。修学旅行でも言ったので大体付く時間は予想できていたのでそれまで寝かせてやることにした。
次は広島ー。っとアナウンスが鳴ったので佐倉を起こそうとしたが、ただ起こすだけじゃつまらないので、新幹線に乗る前に買った本についていた輪ゴムでゴムパッチンをして佐倉を起こした。
「痛ったぁぁぁー。なんかしたぁ?」
佐倉は目を見開いて言った。
「あはは。何もしてないよ。」
と冗談めかしく言ったので佐倉は疑っていたが、ほら。降りるよ、と言ってごまかした。
「さーてと。やっと着いたね。ちょうど12時過ぎたところだしお昼ご飯食べよっか。」と言って佐倉と共に向かったお店は僕たちが修学旅行で行ったお好み焼きの店だった。
「まじで言ってる?またここ?別にいいけどさ。せっかくだから違う店いこうと思わないわけ?違う味にも巡り合えるかもしれないのに。」
「別にいいでしょ!。それに成瀬君と二人きりだと味も変わるよ。きっと。」
僕がどういうこと?と、聞く前に佐倉はどうどうとお店に入っていった。この前、来店したときとなんにも変わらなかった。
「んー。じゃあ私はデラックスにしよーっと。この前中野君の美味しそうだったから。あとはメロンソーダ!成瀬君は?」
「じゃあ僕はいか玉で・・・あ、エビトッピングお願いします。あと烏龍茶も。」
「あ、私も烏龍茶で。」
僕たちの注文を承って店員はそそくさと戻っていった。
「あれ?成瀬君の雪乃さんのだね。君も美味しそうに見えてたの?」
佐倉がそう言ったていたので、僕も少し気になっていた雪乃のものを頼もうと思っていたからだ。
「まあそんなとこ。でも僕にはカルピスは甘すぎる。」
なんてたわいのない会話をしているとあの時と同じ容器にたっぷり入った具材が運ばれてきた。
佐倉はお好み焼きを焼くのが上手なようだった。修学旅行の時も上手で、中野が目を輝かせて見ていたのを思い出した。
「佐倉ってさ。お好み焼き焼くの上手だよね。てかなんか料理だけ上手そう。」
僕は褒めたつもりだったが何か気にくわなかったのか頬を膨らませて言った。
「だけ、って何。だけって。まあ料理は上手だけどねー。あ、そうだ。こんど成瀬君にもご馳走してあげるよ。私の得意料理。」
佐倉の料理は少し気になったが、その料理を食べるということは家にお邪魔するということなので断った。家に上がるとなんだかめんどくさくなることが安易に想像できたし、佐倉の家は金持ちと知ってるし、変に緊張するのは嫌だったからだ。
「ええー。別にうちに来てもいいのにぃー。」
すると佐倉は何か思いついたように、
「そうだ!じゃあ逆に私は成瀬君のお家にお邪魔するっていうのは?」
僕は秒で却下した。僕の母親に何か勘違いされるかもしれないし、兄になんて言われるかわからないからだ。まあ兄は大学生なのでほぼ家にはいないが、母親はいない日なんてない。
「んー。じゃあどうするべき・・・?」
僕に聞かれてもどうしようもないことだと思いながら、少し考えてあげたが特に思いつかなかったので、
「佐倉が死ぬまでに行きたいとこにいけばいいんじゃない?それが一番いいと思う。」
「そうだねぇ。私が死ぬまでに行きたいとこかぁ。ウユニ塩湖とかぁ、万里の長城?どう?」
「まあいいんじゃない。佐倉の家は金持ちなんだろ?じゃあ家族で行けるだろ。そこらへん。」
すると佐倉は首をかしげて1割くらい頭の片隅で予想していた言葉を放った。
「へ?成瀬君と行くんだよ。またまた。冗談言って。」
僕は冗談を言ったつもりは欠片もなかったが、ついっていってもいいという気持ちは少しあった。佐倉に付いていけばおいしいものに巡り合えそうだったからだ。
「まあ佐倉についていけば美味しいものに巡り合いそうだね。」
ふふっ、成瀬君も行きたいんだね、と勝手に解釈されたがいつものことなので気にしなかった。
「あー。お好み焼きっていつ食べても美味しいね。」
佐倉はお好み焼きが入っているお腹を摩りながら言った。そのあとは広島の有名な所を回った。佐倉がなんと船の予約をしていたみたいで厳島神社を間近で見ることができた。
間近で見るのと遠くで見るのとではやっぱり違った。まあそれだけだった。別になんとも思わなかった。佐倉も同じようで僕に話しかけたり、海を眺めていてせっかくの神社はあまり見ていない様子だった。いつの間にかもう夜になっていた。今から帰ろうと佐倉に提案しても無駄だということはわかっていたので、大人しくついていった。少し歩いていて目の前にめちゃくちゃ大きいホテルが現れたがまさかな、と思ったがそのまさかだった。
「よし。着いたね。チェックインしてくるからそこの椅子で待ってて。」
と、僕が何か言いたそうなのを絶対知っていたが、そそくさとフロントのほうに向かっていったので仕方なく椅子に座った。ボフッと音を立てて座りその座り心地よさでこのホテルは良いところなんだなと確信した。今日は一日中歩き回ったのでとても疲れていた。
「おまたせー。じゃレッツゴー。」
と、疲れていない元気な声が僕にかけられた。
「このお金はいつか返すから。絶対に。じゃ鍵貸してくれないかな。」
「お金はいいよ。はい。鍵。」
と鍵は渡されたのいいが、佐倉の手には鍵は一本しかなかった。流石にそんなことはないだろう。
「ちなみにさ。鍵が一本しかないってことは佐倉と同じ部屋ということはまさかないですよね?」
ふふふ。と佐倉は不気味な笑みをこぼした。
ガチャっと部屋によく鳴り響いた。きっと大きい部屋なんだろう。佐倉は入るなり、
「うわー部屋広っろ。成瀬君見て見て!夜景めっちゃ綺麗だね。」
「もう少し静かにしてくれないかな。声が響いて余計に大きく聞こえる。」
佐倉は部屋をうろちょろと騒がしく回っていた。たしかに二人にしては広すぎだった。
「よしっ。じゃあ早くお風呂入っちゃうかな。あっ、そういえばここ大浴場あるんだった。
「それはいいね。やっと一人で落ち着ける空間になれる。大浴場行くの賛成。
「まあ理由はいいとして決定ね。じゃ準備できたら行こっか。」
佐倉と一緒に地下一階の大浴場に向かった。休憩場所もあり、入浴が終わったらここで待ってるらしい。僕は長湯派なのでゆっくり入ろうと思った。あいにく他に人はいなく、僕一人だけで、浴場はだいぶ広く落ち着ける空間で満足した。
僕が入浴を済ませて休憩場にいくと佐倉はフルーツ牛乳を2本も飲んで僕のことを待っていた。
「あっ。おかえりー。成瀬君も飲む?フルーツ牛乳。お風呂上がりのフルーツ牛乳って何本でも飲める気がする。」
「それは飲みすぎだと僕は思うけど。」
まあ佐倉はおいしそうな顔をしていたので佐倉がいいならいっか。と思い、僕はコーヒー牛乳を一本購入した。
成瀬君もいい飲みっぷりじゃない、と茶々を入れられたが気にせず飲んだ。たしかに何本でも飲めそうな気がしたが佐倉にそれを言うのはなんだか悔しいので言わなかった。
僕たちは大浴場を堪能し、1階のコンビニで軽めの夕食を買って、部屋で食べるということになった。佐倉はコンビニに着くなり、チョコレートやグミ、ゼリーなどを買っていた。
お菓子まで買うのかと思って、僕はサンドウィッチとサラダをかごに入れた。結局、佐倉はお菓子を主に買っていて、ちゃんとした食事で買ったのはおにぎり一個だけだった。
「ねぇ。佐倉の夕食ってそのお菓子とおにぎり?」
と、帰っている途中のエレベーターで佐倉に聞いた。
「うん。お菓子って不思議なものでさ、気分上がらない?まあ足りなかったら成瀬君のもらおーっと。お菓子は美味しいからオッケーってこと。」
なにがオッケーなのかと思った。それに佐倉はさっきから小さな子供が欲しい物を買ってもらったような気分だった。それを見ていると佐倉の言ってることはあながち間違いではないのかもしれないと少しだけ思った。
「ふー。なんか疲れちゃったー。」
佐倉はお風呂に入ったのに疲れたという矛盾を言いながらお菓子の袋を次々と開けていた。佐倉はお菓子を食べている時はなんにも喋らず、黙々と食べていた。おそらく佐倉は家ではこうゆうものは食べていないことは想像できた。なんて佐倉を見ていると、
「なんか成瀬君の食べてるのって朝ご飯って感じがしない?もうちょっと夕食みたいなの選ばなかったの?」
「その言葉そっくりそのまま佐倉に返すよ。」
佐倉は自分の食べている物を見て、それもそうだね。お互い様かぁ。と言っていた。すると佐倉は何かを思いついたように自分のリュックをあさりだして、トランプを取り出して僕に見せつけてきてこう言った。
「よしっ。じゃあトランプでもしよーか。何するー?」
「もう僕寝たいんだけど、まあどうせ素直にやめるなんて言わないことは知ってるからいいよ。」
「ふふふ。私のことを知ってきたねー。じゃあババ抜きは?」
「それ二人でやるもの?」
と、言ったが佐倉はババ抜きと決めたらそれしかしないようだった。結局ババ抜きをしていたが白熱した展開もなく結局白熱したといえるとこは最後のところだけだった。
佐倉はとても表情に出やすいタイプだった。5回やったが5-0で僕が勝っていた。佐倉は負けず嫌いらしく負けると駄々をこねるようにもう一回と何回も言ってきた。
わざと一回負けようと思った。どっちかがババだったが、二枚目に僕が触れたときに佐倉の肩が上がったのでこっちを引いたら見事にババだった。
「うわー負けちゃった。よし寝るか。」
「絶対手抜いたでしょ。わるわかり。」
佐倉はこういうのはとてもするどかった。嘘などはすぐに佐倉にはバレるようだ。
「はぁ。なんでわかるんだよ。じゃあもう一回だけね。これで最後だからね。」
「やっぱりね。じゃあさ。最後だから条件付きで。」
そんなの飲みたくなかったが最終的には佐倉に押されてしまう運命が予測できたので軽い条件を願った。
「何?軽いものにしてね。」
「これで勝ったほうは、なんでも相手に聞ける権利っていうのどう。よし。決定ね。」
僕の返事を待たずして佐倉は決定した。まあ顔に表情がすぐ出てしまう人がいきなりポーカーフェイスになれることはなかった。一瞬僕は何を聞かれるのだろうかと気になったが、めんどくさい質問だったら嫌だったので、手加減しないで普通に勝った。
「あーあ。負けちゃった。はぁ。まあ仕方ないよね。これが勝負って言うものだし。さ。なんでもどうぞ。」
佐倉は残念そうに顔をクッションに沈めながら言った。佐倉に聞きたいことか。特にこれといったものはなかった。ふと思い浮かんだのは病気のことだった。そういえば何の病気かも知らなかったし、いったいこんな風に旅行に行ったりして大丈夫なのか?と疑問に思ったが、佐倉は僕と出かけてるときに自分から病気のことを話す、ということはなかったので少し躊躇した。僕は適当に、
「じゃあ、今までで一番うれしかったことは?」
と、暗い話ではなく明るい話をした。
「なにそれ。んー。特にないかな。毎日どうでもよかったから。てか結構考えてた割にはそれ?成瀬君絶対考えてたやつとは違う質問したでしょ。」
佐倉は僕の心を読んでいるのだろうか。もしかしたら僕も顔に出やすい性格なのかもしれない。
「なんでもいいんだよ?私だから。どうせ暗い話とか?私の病気のこととか?それとも・・まさかの恋愛相談!?」
僕はその選択肢を出されてもう気になりすぎて、言ってしまった。
「佐倉はどんな病気なんだ?」
佐倉の笑顔が急降下していくように暗くなった。そして最終的に苦笑い僕に言った。
「心臓の病気だよ。それだけ。」
「そっか。」
少しの間沈黙が流れた。言葉を発したのは佐倉だった。
「私からもいいかな。おねがい。」
今までにないくらい真剣な顔つきで僕に向かって言ってきた。さすがに断れない空気だった。
「いいよ。」
「ありがと。実はね。広島に来たのもう一回成瀬君と修学旅行みたいなのをしたい、とかじゃないんだ。成瀬君とのあの日の思い出に未練があったからなんだ。」
「え?」
何言っているのかわからなかった、という方がよかった。
「覚えてる?これ言えばわかるかなぁ。夕日、海斗君。」
ゆうひくん。僕はそういわれてあの頃の記憶が鮮明に蘇った。それは5年前の修学旅行でのことーーーーーー


ーゆうひのゆうかとの出会いー
まだあの頃の成瀬海斗は苗字が変わるだの難しくて自分は苗字がなくなったと勘違いしていた。
「おーい。かいとー。おいていくよー。」
まだ小学6年生の中野凪が言った。
「ちょっと先行っててー。お腹痛い。」
「ええー?待つのに。じゃ昼ご飯食べるとこわかるでしょ?ついてきてねー。」
と、班長の雪乃が言った。成瀬海斗は嘘を付いていた。お腹なんて痛くなかった。かかえこんで自分一人でどこに行こうか模索していた。この頃の成瀬海斗は父親を亡くしてまもなかったが、精神カウンセラーの判断で正常だと判断されていた。が、本人は違った。成瀬海斗は勉強面では賢くはなかったが、何か本能的なものや人の気持ちなどはある程度察することがこの年齢でできていた。なのでカウンセラーや家族と接する時は元気に。部屋や一人でいる時は途方に暮れたようになっており、なにもかもがつまらなかった。
成瀬海斗は一人であの後みんなが行っている昼食場所にはいかず、海が見える浜辺に来ていた。成瀬海斗は一人つまらなそうに砂浜に体育座りをして、膝に顔をうずめていた。
「あのぉー。君も一人ぼっち?」
誰だ?と思い顔を見上げた。するとそこには大人びた少女が立っていた。
「すみません。誰ですか?」
「あ、いや。私、自主研修つまらなくてここまで来たんです。もしかしたら君もそうかなぁーって」
「・・・。」
「えっとぉー。具合悪いの?顔色良くないよ?ちょっと待ってて。」
数分後、少女は見ず知らずの少年にお茶を上げた。
「これ上げる!なんだか顔色悪いし、水分補給したほうがいいんじゃない?あっ、私の名前は佐倉優花っていうんだ。ゆーかって呼んでいいよ!君の名前は?」
「あーえっと・・、海斗です。苗字は・・・ないです。まだ。」
「え?どーゆーこと?ないの?苗字。あと敬語じゃなくてもいいよ。」
「お父さん、死んじゃったんだ。だから今は苗字がない。それよりもいいの?こんな場所にいて。」
すると少女は悲しい目をして成瀬海斗を見つめた。
「いいんだ。私は。それより君が心配だよ。はい。ハンカチ。なんかごめんね。」
なぜ少女がハンカチを渡してきたのかわからなく不思議に思っていると頬に涙が流れていた。それに気づくともう止まらなかった。
「私はここにいるよ。たとえ今私の班の来ても行かない。」
本当に少女は成瀬海斗が泣き終わるまで待っていた。
「ありがと。これ。」
「うん。苗字考えたよ。君の名前は夕日海斗くんって言うのはどうかな。?」
「えっ。ゆーひ海斗?」
「そ。勝手に考えて悪いけどね。今日は雲もないし夕日も綺麗に見えそうだなーって思ったから。それに夕日と海ってなんだか落ち着かない?」
成瀬海斗は未だにわからなかった。なんで見ず知らずの自分にこんなにも気にかけてくれるのだろうか。それに少女の目にはなんだか未来がなかった。
「ふふっ。ありがとう。ところで優花も具合悪いの?なんかわからないけどそんな感じがする。」
それは肌の色からしてもわかっていた。とても色白いので少し気になっていた。
少女は驚きを隠して言った。
「私さ。病気なんだ。」
「え?大丈夫?」
なんで自分でもこんなに心配しているのかわからなかったが本当に心配した。
「まあまだ発見したばっかりなんだ。でももう大人になる前に私は死ぬんだ。」
「そうなんだ・・・。」
それから色々話しをした。学校についてや、趣味について。だけどそれは成瀬海斗とまったく同じ見解で最終的に行き着く先は つまらないというものだった。
もうすっかり日が沈む頃になっていた。カラスが見下すように元気よく鳴いていた。
「もうそろそろ集合場所に戻ったほうがいいんじゃない?」
「そう、だね・・・。あ、あのさぁ!」
成瀬海斗は自分でも驚くほどに声を張り上げた。少女は驚いた顔で夕日海斗を見ていた。別れ際にふと思ったがまた優花とはきっといつか出会うと思った。
「お互い乗り越えられたときまたこの場所で逢おう。いつかはわからないけどまた優花とは会えそうな気がするよ。お茶ありがと。」
そして少女は元気よく、「--------------」
そして、成瀬海斗と夕日海斗は集合場所のホテルへのバスへ乗り込んだ。

ーゆうかのゆうひとの出会いー
大変、言いにくいことなのですが、お子さんは心臓の病気にかかっています。おそらく遺伝的なものではないでしょう。
と、修学旅行の前日の子供を持つとある裕福な家庭に告げられた。
「優花ーおいてくよー」
「ごめーん、ちょっと昼食場所に先に行っててくれないかな。先生から呼ばれちゃった。」
「そうなの?じゃあ待ってるからねー」
と、嘘を付いて広島のガイドマップを開いた。佐倉優花は行きたくもない自主研修でせっかくの広島の観光機会が失われるのはもったいないと思い単独行動を選択した。佐倉優花は背も高く妙に大人びていたので高校生と小学生ながら間違われることが多かったので、バスなどタクシーなどは一人で乗ってもばれないことが多かった。
佐倉優花はタクシーに乗り込み、OO海岸まで。と言い、到着を待っていた。佐倉優花は自分が病気だと判明してからは日常がつまらなくなっていた。自分は死ぬのだから、なにをするにも消えてしまうと思ったからだった。海岸を一人歩いていると、浜辺で一人うつむいている少年がいた。具合でも悪いのかと思い声をかけた。少年が顔を上げると本当に悪そうだったので近くにあった自動販売機でお茶を買ってあげた。少年の名前は海斗と言った。苗字はないらしかった。どうゆうことだろうと頭をフル回転させたが結局わからないので聞いた。父親を亡くしたらしかった。なので苗字が母親のになるのか、今のままかがわからないんだとすぐにわかった。なにか励まさないといけないと思い、苗字を考えてあげようと思った。仮の苗字かぁーっと考えていると水平線に夕日が少しだけ見えていた。夕日海斗。これだぁ!と思い、海斗に言った。海斗は笑ってくれたので嬉しかった。それに驚きもした、なぜ病気だとわかったんだろうか。正直に胸の内を話してみた。見ず知らずの人だから大して気にしないだろう。すると夕日海斗は本当に心配してくれた。こんなにも目がつまらなそうだったのに。
なんだかこの人とは気があいそうだなーと本能的に思った。もう夕暮れ時になっていたので夕日海斗君のことを気遣って戻るように促した。すると夕日海斗は帰り際に、
「----------」
と言った。優花も同じことを思っていた。なので元気よく言った。
「私も夕日君ともう一回会いたい。私も君と会えるまで死ねないね。乗り越えたときにまた会おう。じゃあね!夕日海斗君。」」
と声を負けないくらい声を張り上げて言った。
そして、私は単独行動をした自分を褒めたたえた。

「佐倉優花・・。」
「ふふっ。思い出した?まあ成瀬君は乗り越えられてたね。それが一番良かった。」
僕はすべて思い出した。佐倉が僕に励ましの意味を込めて夕日、という苗字をつけてくれたこと。あのまた会う時の条件のことも。
「やっぱりあの時の私はバカだったね。病気なんて治る病気じゃなかったよ。約束破っちゃたね。ごめん。」
僕は言葉が出なかった。口が乾ききっていた。
「もう寝よっか。おやすみ。」
佐倉はこれ以上何も言わずにベットに潜っていった。僕もベットに入りひたすら考えた、だが一日中歩いたためか疲れてそのまま眠りに落ちてしまった。
翌日。僕たちはほとんど会話をしなく、ホテルをチェックアウトし、新幹線の時間を待っていた。ただただ沈黙が流れた。僕は決心した。
「あのさ。」
「ねぇ。」
最悪だ。こういう時に限って言葉がかぶる。
「な、何?」と僕はぎこちなく佐倉に言った。
「困らせちゃうのも無理あるよね。いきなりあんな昔のこと言ったんだもん。もう会わないほうがいいのかなぁ。成瀬君こそ何?」
なぜか胸が強く傷んだ。
「い、いやなんでもない。」
と、用意していた言葉が発せられることはなかった。それから僕たちは新幹線に乗り、見慣れた景色の地元へ帰った。
「じゃあ、また明日。学校で。」
と、佐倉は僕の返事を待つことなく帰っていった。僕はしばらく駅の前で立ち尽くしていた。なんだか帰りたくない気分だった。
だが、家に帰えらないわけにもいかないので家に帰り、明日の学校の準備をして寝ることにした。僕のスマホにメールが鳴る音はしなかった。