第二章 優しい花の葉っぱ。

何故僕は人の海の花火大会に佐倉と来ているんだ・・・。
「あれっ?成瀬君つまらなさそうだね?どうしたの?」
「いや・・・あの。」
「ほら楽しもうよ。君には時間があるかもだけど私には時間がないんだからさー。」
はぁ。僕は人生においてTOP1位くらいの過ちを佐倉に対してしてしまった。それは一週間前の水曜日の出来事だった。。。

僕がちょうど寝ていた時にスマホの振動で起こされた。まったく誰だよこんな夜中に起こしてくる奴は、と思って画面を見た。
〉〉成瀬君。来週の花火大会行こうよ。どうせ暇でしょ?って言ってもどうせ行かない、って言うと思うから行くって返事したら私の秘密を教えてあげます。返信待ってまーす。
PS.無視したら何度も送り続けるからなー。
なんだよ、こいつ。こんなしょうもないことを夜中に送ってくるのかよ。と思いながら仕方なく返信してやった。
〉〉別に知りたくもないけど。結論、行かない。以上。もう寝るから。じゃあな。
〉〉え。まさかその方法で返してくるとは。やるね。私病気なんだ。だから時間がないから付き合ってよ、花火大会。
佐倉は嘘がつくのは下手なようだった。目も覚めてしまったので佐倉の戯言に暇だったので付き合ってやることにした。後々にこの行動を僕は寝とけばよかったと後悔することとなる。
〉〉はぁ。それ本当に言ってる?じゃあ何か証拠はないの?その証拠を僕に見せたら花火大会の件を考え直すよ。
どうせ嘘だろと思ったので困らしてやろうと思い返信した。
〉〉わかった。その言葉覚えておいてください。
一瞬嫌な予感がよぎった。よくよく時間を見ると夜明けだったことを知り、スマホで動画を見たりして朝を待った。
そして過ちを犯した翌日。なんと佐倉は本物の薬や注射器を持ってきた。色々佐倉は僕に薬の種類など僕にどうでもいいことを言ってきた。僕は騒然とした。佐倉の言っていたことは本当だったのだ。
こないだの国語の時間に書いていたことは事実だったんだと思った。病気にかかって死ぬ。
「あのさ。僕に謝罪するのは今のうちだよ?」それでもこの現実をまだ信じられなかった僕は言った。
「いやいや。まぎれもなく事実。だからさ、私には時間がないんだ。この私の少ない時間で成瀬君と花火大会に行きたいってだけ。別に好きとかじゃないよ?前にも行ったけど気が合いそうってだけ。だからさ、死ぬまでに思い出?みたいなのを作っておかないとなぁって。成瀬君にはそのお手伝いをしてもらうってわけ。」
「会ってまだ一か月もたってない僕がするものじゃないでしょ。しかもなんで僕なんかがやるんだよ・・・。」
「うーん。成瀬君を選んだ理由は前にも言ったけど気が合いそうだったからね。日常がつまらないという観点でさ。」
たったそれだけで僕を選んでいいのかよと思った。てかそもそももうすぐ死ぬ人に正直あまり関わりたくなかった。それから佐倉は僕を説得していた。僕の気持ちは特に佐倉の話を聞いても揺らがなかった。授業開始10分前のチャイムが鳴った。
「じゃあね。僕は佐倉のその手助け?はできないよ。荷が重すぎる。もうすぐ授業開始だから。」
そう僕は言い捨ててさっさと教室に戻ろうとした。すると、佐倉は僕の腕をつかんで駄々をこねるように言い放った。
「ふふふ。成瀬君が私の手助けをしてあげてもいいよ、とか言わない限りこの場所を動くつもりは断じてないです。もちろん成瀬君も一緒にね?」
「はい?自分で何言ってるかわかってる?最初に言っておくけど断じて言うつもりはない。手離してくれないかな。」
と言い、僕が強引に手を放そうとした・・・が、佐倉の握る強さは僕より強かった。
「成瀬君が力が弱いことは知ってるよ。それにここで逃げても私と二人で話してたことみんなに教えちゃうかもねぇ?私は全然大丈夫だけども。ちなみにね。」
とてもめんどくさかった。嘘でも言って放してもらおうと思った。
「わかったよ。手伝うよ。はいはい。じゃ離して。」
「おっ。了解!嘘ついたら私の執事が黙ってないよ?」
羊?・・・執事か。佐倉はどこかのお嬢様なのか?最初にあったときにも思ったがこいつは謎が多すぎる。若干、佐倉の謎に興味が出てきた。
「嘘はつかないよ。でも一回だけね。で?最初のお手伝いはいつ?」
「うーん。じゃあ後でメールするよ。このくだらない日常を二人で色をつけようね!」
何言ってるのか相変わらすわからなかった。その日の夜12時。花火大会に行くという趣旨のメールが送られてきた。
そして今にいたったという経緯だ。

「あのさ。こんな人の海にいて佐倉は平気なのか?僕はもう帰りたい。」
素直に思ったことを佐倉に伝えた。佐倉はやっぱり豪華な浴衣を着ていた。美人なほうなのですれ違う人が佐倉のほうを振り返り一緒にいる僕のほうまで見られている気分で言葉で表せられないほどの不快感だった。
「うーん。たしかにね。買うもの買ったしあのベンチで食べて花火でも見よっか。」
佐倉は驚くほど買っていた。リンゴ飴、焼きそば、かき氷・・・。そのせいで僕がほぼ持つ羽目になっていた。そして二人掛けのベンチに座った。
「さーてと。食べよっか。なんでもいいよー。」
「あのさ。前から思ってたけど佐倉の家は裕福なのか?」
佐倉は焼きそばを口に運びながら言った。
「うーん。わからないけど、お父さんは医者でお母さんは弁護士だね。お兄ちゃんも2人いるんだけど、両方医者を目指してるんだ。まあ私だけ病気というおもりがついているってこと。もう死ぬからいいんだけどね。余命があるから好きなことさせてもらってるって感じかな。親は忙しいから一人だけどね。いつも。死んでしまう私だけを見てるってわけにはいかないからね。」
と、佐倉は少し悲しそうな顔を見せた。こんな佐倉は見たことがなかったので言葉がでなかった。余命はいつなんだ?そんなに時間があるのか?と僕の頭の中がよぎった。僕の反応を見ていた彼女はわかりきっていたように言った。
「余命はあと半年だよ。でも、本当はもう私はいないんだ。去年に余命は半年です、って言われたけどまだなんか生きてる。だから病院で再検査したらまた半年の余命宣告されたよ。笑えるよね。」
正直、全然笑えなかった。そんなに佐倉には重い鎖がついているということに驚いたからだ。同時にそんな貴重な時間を僕に見たいな人間に使っていいものじゃないし、それを拒否している僕との付き合いは本当に無駄だと思った。そのことを隠すことなく佐倉に言った。
「いやいや。無駄なんかじゃないよ。初めてだったから君に興味が湧いたんだ。私より現実を拒否しているようだったからね。君は。最初にあった君は本当にセミの抜け殻のようだったね。それはもう死んでるみたいにね。だから死んでるもの同士仲良くなれそうだと思ってさ。」
「もう帰ろっか。花火も見たでしょ。」
「そうだね。じゃあ今日はありがとね。もう成瀬君とは合わないだろうね。メアドも消してもいいよ。」
そう言った佐倉は悲しそうな目をしていた。それを見た僕は思考を働かす前に言った。
「いいよ。君の手伝いをしてあげるよ。」
「えっ?今の成瀬君の言葉だよね?急にどうしたの気持ち悪いよ。」
そこまで言うかと思ったけど、もう半分やけくそで言った。
「仕方ないから君の手伝いをしてあげるって言ったんだ。てか、前にも言ったでしょ手伝ってあげるって。」
「でも、それは一回だけでしょ?なんで急に?」
「めんどくさいなぁ。僕はちょっと変わった日常もいいかなって思っただけだ。君が余命だのなんだの言ったから死が身近に感じたんだよ。だから生きてるうちに少しこの日常に変わり種を入れてもいいかなと思った。以上。」
「ふふふ。なんだかんだ私と一緒に遊んだことが楽しかったというわけだねぇ。いいよ。契約成立ね!」
佐倉は勝手に自分の都合のいい言葉に変える癖があるようだった。まあ結論は伝わっている様子だったので何も言い返さなかった。そのあとは何もなくそれぞれ各自の家に戻った。
佐倉は車が迎えにきていたようで本当に執事がいた。花火の火薬の匂いが混じった生ぬるい風が二人が座っていたベンチに吹いた。
翌日からの佐倉はなんだか違って見えた。病気でもうすぐ死にますという人に普通の友達感覚で話せるほど僕はあいにくそんな強靭な心は持ち合わせていなかった。でも、佐倉は学校の中ではあまり話しかけてこなかった。僕もそのほうが都合がよかったので安心していたときだった。スマホのロック解除の画面いっぱいに文字が広がった。それは佐倉からのもので佐倉とでかけるときの約束事項みたいなものだった。一通り見たが、約束事は5つくらいで、あとは顔文字だの記号だのでほぼ埋め尽くされていた。そして最後に意味不明なことが書いてあった。
〉〉PS.最後に言っておくけどさ・・・・私を好きになったらだめだからね?"(-""-)"
という自意識過剰の名を欲しがるようなメールだった。最後の"(-""-)"←これが腹立つ。呆れながら了解というメールを送りスマホを閉じようとしたときだった。雪乃からメールが来た。
〉〉ねえ。成瀬さ。佐倉さんとこないだの花火大会行ったの?なんか見たっていう人がいたけど。
心臓が止まるかと思った。僕はやらかしてしまったと思った。花火大会の会場はとても広かったので見つかる心配はほぼないと思っていたが、そんなことはなかったみたいだった。正直に打ち明けるか悩んだが、すぐにやめた。それは実は雪乃からも一緒に行こうよという趣旨の内容のメールをもらい、断っていたからだ。なんとかはぐらかそうと僕はメールを返した。
〉〉いやいや。そんなことはないよ、花火大会の日は家族と出かけてたし。
なるべく今、自分の考えた中で最もありそうな嘘をついた。
〉〉ふーん。そっか。よかったよ。
なんとかごまかせた見たいだった。なにが良かったのかわからなかったけど、僕は一安心した。なんだか佐倉といるといつかめんどくさいことに巻き込まれそうと思いながらも言ってしまったことは仕方ないと自分を割り切った。