「バーガンディーから聞きましたよ。得体の知れない娘を拾ったそうですね」
 ラファの執務机に追加の書類を置きながら、さりげなく話を振ってみました。
「ああ」
 あっさり肯定。
「それで、厨房に住まわすとか」
「ああ」
 こっちもあっさり肯定。というかラファ、いくら得体の知れない娘でも、さすがに厨房はないんじゃないですか? せめて独房でも……ん? こっちの方が扱いが酷いですかね。
 しかし厨房なんて寝る場所ないでしょうが。その娘もそこはつっこんだ方がよかったのでは?
 ……こほん。ちょっと考え事をしてしまったので間が開いてしまいました。
「……まあ、あなたのことですから、きっと何か考えがあってのこととは思いますが——」
 大丈夫ですか? 
 少しの疑問と心配を含んだ視線で、ラファの黒ヒスイの瞳を見つめました。
 私の心配を読んだのでしょう。
「深層心理を読んだが、特に問題はなかった。それに、得体が知れぬ故、逆に放置する方が危険と判断したのだが」
 視線を書類に落としながら言いました。
 なるほど。やはり脳筋(バーガンディー)には語らなかった考えがありましたか。
「だから監視下に置く、と」
「そういうことだ」
「なるほど」
 でもなぜ厨房? ……っと、ツッコミどころはそこじゃないですね。
 ラファが監視すると言ったのですから、私も注意しておきましょう。——まだ会ったことすらありませんけど。