「わたしたち、ナナさんのこと全然知らないですね」 千夏ちゃんが少し悲しそうに呟く。 ナナはあんまり自分のことを話してくれないから。 そう思って俺だってなにも聞いてないのが悪いんだろうけど。 「ナナさんは、わたしたちに少しでも心を開いてくれてるんでしょうか」 千夏ちゃんがそう聞く理由はわかってる。 ───あれは夏休みに入るちょっと前のことだ。あの水風船で遊んだときよりも前のこと。