月を撮るため。
それは夕日を撮った場所が屋上であったように、月を撮るいい場所がある。
そしてその場所につく前にも、もしかしたら今日はいいものが撮れるかもっていう自信があった。
だからすぐにでも構えられるように首からぶらさげていたんだ。
「いや、いま企画をやってまして。いつもなら写真はお断りしてるんですけどもね、今日は特別ということで。ファンの方限定でナナを撮っていいということになりまして。それも携帯とかではなく、こういうカメラをお持ちの方限定で」
そういいながらそのスタッフは俺のカメラを指さした。
「いや、俺ファンじゃないしいいです」
めっちゃ丁寧に説明してくれたのに申し訳ないけど。
「遠慮しなくていいんですよ」
でも全然引き下がらない。
遠慮なんて全くしていない。
というか俺明らかに通り過ぎようとしてたぜ?
どこをどうみたら俺がその“なな”ってやつのファンってことになるんだろうか。
こいつの目、おかしいんじゃないか。



