「あの・・」 もしかしたら無視されるかも。 そんなことを思いながらも、気づいたら話しかけていた。 「・・・」 言葉は発しなかったけれど、彼の視線はたしかにわたしをとらえていた。 「咲良はきっと嬉しかったと思います。あなたのような人がそばにいて」 「・・・ありがとうございます」 彼の中でわたしは全然知らない人。 それでもいい。 ただ、わたしの言葉で少しでも彼の心が温かくなってほしい。 わたしはそのあとお母さんに呼ばれたのでそこをあとにした。 お葬式にも告別式にも、彼の姿はなかった。