「あの、すいません」
だから、声をかけられることなんて俺にとったら予想外のことだった。
関わりたくないと思いつつ無視することもできなくて、後ろを振り返る。
そこにはさっきまでファンをおさえていたスタッフの一人がいた。
首からプレート下げているその彼は、岸田さんというらしい。
「なんですか?」
「そのカメラで、ナナを撮りませんか?」
「・・・は?」
意味がわからない。
だいいち“なな”なんて俺は知らない。
今日に限って首からカメラをぶら下げて帰ったことを後悔した。
いつもならかばんに入れているのに。



