私は菊島(きくしま)詩央(しお)、ごく普通の高校三年生。


学校に通いながらライトノベルを書いている。

1年前からネット小説でデビューして、今はそこそこ本出してるんだ。


一応、詩島(しじま)茎尾(くきお)というペンネームで世に出ている。

まだあんまり有名じゃないけど。


いつかラノベだけじゃなくて色々なジャンルに挑戦したいとは思ってるけど、今は目の前の締切(しめきり)をこなして実力付けていかなきゃね!




──と思った矢先にさっそく壁が。


「もう少し……恋愛要素入れてみましょうか」

「へっ」


学校から帰宅して、ビデオ通話での打ち合わせ。


担当の(やなぎ)さん(キリッ!スラッ!とした美人)が言った。


「ヒロインは一応いるけど存在感薄いし、ここらでいっちょ進展させましょう!」

「えぇ! 恋愛とかよく分かんないし、描くの苦手で避けてたのに……」


17年間彼氏がいたことはおろか、一度も告白されたことなんて無い。

「あら、彼氏いたことない? 今どきの子は高3までに1度は付き合ってると思ってたけど……」

「はいいいぃ?」

そりゃ柳さんみたいな美人なら恋愛経験豊富でしょうけどぉぉぉ!

恨みの視線を向けると、冗談よとでも言いたげに苦笑された。