「あっつー溶け死ぬんだけど…」

 ボーッとしていた私に、いつも一緒に高校へ登校している友達である、香菜ちゃんが話しかけてきた。

 直射日光が照りつけてきて、汗が酷い。

 今年からJK!と言うのに何だかJKっぽさが無い私。

 せめてもと汗ふきシートで汗を拭きながら、重たい足取りで校門へと向かう。

「ねぇちょっと見て、香織!」

 多少興奮気味に話しかけてきたから、何があったんだろう…と、視線の先を見ると…

「あぁ…楪くんか」

 そこには…私たちの同級生である楪 春馬くんが、優しそうな笑みを浮かべて歩いている姿があった。

「何言ってんの、王子じゃん、楪くんか…じゃないって」

 私の口調を一部真似しながら香菜ちゃんは彼の事を王子、と呼んだ。

 楪 春馬くん…『王子』というとんでもない二つ名を持っているイケメン男子。

 『王子』…その二つ名の由来はその名の通り、女子も羨む綺麗な容姿、優しそうな笑顔、何より『王子』のようなスマートな心遣い…まぁその他色々とありますが…

 王子のような言動や行動の数々…それによって彼を好きになってしまった女の子は数知れず…

 まぁ私は興味の欠片も無いんだけれど。

 楪くんみたいな感じの人は大体裏があるんだよね、知ってます。

 ていうか、まず言わせてもらうと、誰にでも優しくする男は良い奴じゃないから!

 …って、何でこんなに男一人にムキになってるんだろう、私。

 まぁイケメンだとは思うけど…あんまり関わりたいって思えるようなタイプじゃないよね。