私は、次の日、


再び浜辺に行った。



男の人は、そこにいた。



「やあ、昨日の子だね。


突然、どこかにいってしまったから、


びっくりしてしまったよ」



男の人は笑っていた。



これは、夢じゃない。


………夢じゃないんだ。



涙がほろりと流れる。



「…………私、透明人間だったの」



男の人は驚いている様子だった。



「誰ともお話しできなくて、


触れようとしても体がすり抜けて、


そこにいることさえ気付かれなくて、


寂しかった。辛かった」



すると、男の人は私を抱き締めてくれた。



「でも、今は透明じゃないだろう?


こうして触れられる。言葉も交わせる」



私は泣いた。



男の人の胸の中で、



ずっと、ずっと泣いていた。



「よしよし、寂しかったんだね。


辛かったんだね」



暖かい。



人の温もりって、



こんなに暖かいんだね。




「僕も、君と同じに孤独だった。


ずっと、一人ぼっちだった。


こうして、人に触れられる。


言葉を交わせる。


でも、誰とも


心を通わせることができなかった。


どんなに心を開いたって、


僕は誰の一番にもなれなくて、


気付けばいつも一人ぼっちだ。


だから、君の気持ちが分かる。


痛いほど分かるよ」



そうだったんだ。


この人も、私と同じ、


一人ぼっちだったんだ。