ある日、私は浜辺へやってきた。
ここは私のお気に入りの場所。
海を眺めているときだけは、
孤独も悲しみも忘れられる。
真っ青な海。真っ青な空。
涙の色と同じ色をしている。
「海、綺麗だね」
誰かの声が聞こえた。
振り向くと、そこには一人の
男の人が立っている。
男の人は、私を見ていた。
「……私が見えるの?」
「うん」
男の人はうなずいた。
………そんなこと、あるわけがない。
私は透明人間。
私の姿が見える人なんているはずがない。
私の声が聞こえるはずなんてない。
これは夢だ。
夢に決まってる。
私は走ってその場を立ち去った。