「あの……お話を聞かせてもらっても、よろしいですか?」

病院の職員に話を聞いて回った陽葵とオスカーは、何の手がかりを掴めることが出来ず、感染症研究センターにやって来た……が、ここの職員の2人に話を聞いても、手がかりを掴むことは出来なかった。

陽葵は、たまたま居た感染症研究センターの職員であろう男性に話しかける。

「はい。どうされました?」

「……俺は、探偵のオスカー・ブラックというものだ」

オスカーの自己紹介に、男性は驚いた顔を見せた。そして、男性も自己紹介をする。彼は、イチイ・ロビンソンと名乗った。

「では、イチイさんにいくつかお尋ねしたいことが……」

「……この研究センターから、コレラ菌が漏れた可能性があるんだ。何か、知っていることは無いか?」

少し考える動作を見せたイチイは、ゆっくりと口を開く。

「…………いえ。分からないですね……ここでは、菌が漏れることが無いように、厳重に保管や管理をしていますので……まず、漏れることはないですね。お役に立てず、申し訳ありません」

イチイの申し訳なさそうな表情を見て、陽葵はニコリと笑うと「お気になさらず!」と言った。しかし、オスカーは表情を崩すことなく、無言でイチイを見つめる。