その沈黙を破ったのは、スミス刑事だった。

「……考えるのは、情報が集まってからでも良いと思う」

「そうだね」

スミス刑事の言葉に、陽葵とエリカは同時に頷いた。



「……最近、コレラで亡くなる人多いな」

そう呟きながら、オスカーは赤ペンで地図に印を付ける。

オスカーの言う通り、ここ数週間で何人もの人がコレラで亡くなっていた。今日も、コレラで1人亡くなっている。

「……そうですね」

地図を覗き込みながら、陽葵は頷いた。赤ペンを机の上に置き、オスカーは顎に手を乗せながら、地図をじっと見つめる。

「……もしかしたら……近くにある病院や感染症研究センターから、コレラ菌が漏れたのでは？」

珍しく表情を崩し、オスカーは手を話した。オスカーの言葉に、陽葵は驚く。

「……じゃあ、その病院や感染症研究センターに話を聞きに行ってみましょう！」

ニコリと陽葵は笑って、「エリカ！」と言いながらエリカのいる部屋に向かって走り始めた。今から出かけることを、エリカに伝えるために。

それをオスカーは、じっと見つめる。そして、オスカーは今の自分の気持ちに気が付くことなく、その場で陽葵が来るのを待っていた。