学校から出た時は登校する生徒とすれ違ったのに、今学校に戻ってきたら、もう下校する生徒がいる。もう、放課後になっていたんだ。

 でも、エセはまだ学校にいる。そんな気がした。

 乱れる呼吸と震える足をなんとか抑え、私は後者に入り、音楽室を目指す。

 きっと、そこにいる。

 音楽室の前につくとギターの音が聞こえた。

 優しい音色。

 エセだ。

 私は扉の前で深呼吸する。また拒絶されるかもしれないという恐怖心はやはりあった。睨みつける視線、温度のない言葉。それらが頭をよぎらないわけがなかった。

 でも、逃げない。

 私は意を決して扉を開ける。

 ガラッ。

 エセはギターを弾く手を止め、こちらを見る。その目は驚いたように見開かれた。そして、すぐにまたあの冷たい視線に変わる。

 エセは視線を逸らし、ギターを手早く仕舞い、音楽室から出ようとする。

「わあああああああああ!!」

 私の突然の叫び声にエセは足を止める。

「相沢隼人!!!」

 私はエセを見る。もう、目を逸らさない。

「逃げるな!!」

「お前なあ、しつこい…。」