黒い桜の花は、散ることしか知らない(上)

 Mちゃんのお母さんが、入院してから、Mちゃんは、実弟に家で1人暮らしをしていた。
 それは、「おばちゃんのところへ行きやすいように。」との旦那さんのおもいやりからだったが、Mちゃんは、毎日のように、あたしを呼び出し、おばちゃんのことではなく、真夜中に、SI の所へ自由に行っていた。
 「SE君に手紙書いて。
待ち合わせの時間を。」
「えっ…。
分かった…。」
 あたしは、高校以来、手紙を書く機会が、中々、なかったので、「体育館裏に来い!」的な、手紙しか書けなくて…。
 女の子らしさが、一切ない手紙だった。
 その手紙をMちゃんに渡した。
 「どうするの?
その手紙…。」
「SE君に渡すの。
そうしたら、えりちゃん、SE君に会えるでしょ?」
「えっ…。
うまくいくかな…?」
「大丈夫。
ちゃんと、渡すから。」
「うーん…。
分かった…。
YTに会えるなら。」
「じゃあ、決まり!!
はい!!
行くよ!!」
 あたしは、Mちゃんに言われた通り、コンビニ近くで待機して、時間がきたら、コンビニに行く手筈(てはず)になっていた。
 コンビニで待つ時間になったので、コンビニに行った。
 少し待っていると、背中をちょんちょんと、突(つつ)かれた。
 あたしは、後ろを向き、目線を下にした。
 そこには、ハニカムYTが居た。
 「あっ、見つかっちゃった。」
「YT…!!
どうして…?」
「おつかい。
っていうのは、建前で、えっちゃんに会いたくて…。」
「YT…。
嬉しい…。
(あんな手紙で、ごめんね…。)」
 幸せムードのあたし達の所に、邪魔が来た。
 それは、A。
 Aに気付いたのは、YT。
 「えっちゃん、隠れてっ!!」
「えっ?」
「A君が来た!!」
 あたしは、あたふた…。
 YTは、落ち着いた様子で、Aに近付いた。
 「SE。
どうしたんだ?」
「おつかい。
Aは?」
「トイレ。」
「そうなんだ。」
 沈黙が流れる…。
 それを破ったのは、A。
 「嘘だろ?
あいつに会いに来たんだろ?
呼べよ。」
「そんなことないっ!!
えっちゃんは、関係ないっ!!
たまたま、会っただけ!!」
「嘘つけよ!!
あいつ居るんだろ?
呼べよ。」
「えっちゃんは、関係ない!!
だから、呼ばないっっ!!」
 その押し問答は、結構、続いた。
 YTが、庇(かば)ってくれてる間に、あたしは、コンビニを出た。
 続いて、YTが出てきた。
 そのYTを捕まえた。
 「YT!!」
「えっちゃん!
Aが出てきたら、大変だから…。」
「分かってる。
だから、これだけ。」
 あたしは、待ち受けを見せた。
 「誰…?」
「えっ…。
YT…。」
「あっ、俺か!!」
「嬉しい?」
「うん。
すっっごく!!」
「良かったぁ。」
「じゃあ、A君来るから…。」
「うん。
分かった。
またね?」
「うん。」
 あたしは、るんるんで、車に戻った。
 車に戻ってから、Mちゃんにlimeした。
 「YTに会えたよー!!
ありがとう!!」
「良かったぁ
じゃあ、私も帰るね。」
「うん!!」
 Mちゃんは、車に乗ると、手紙を渡した時の事を、話し始めた。
 「もう、SE君、えりちゃんの声にしか反応しないの分かってるけど、ちょっと、酷すぎ…。
私が、手紙の間に、1000円を挟んで、渡したのに、お金と手紙をスッと取るし。
まぁ、手紙読んでから、早かったけど。」
 Mちゃんは、笑い出した。
 「よっぽど、えりの事、好きなんだねぇ。」
 あたしが、Aに邪魔された事を話すと、Mちゃんは、「待ち合わせ場所変えなきゃ。」そう言って、車が、少し隠れれる所に、待合い場所にした。
 「ここなら、大丈夫!!
えりちゃん…。
地図、かくの下手過ぎ!!
これじゃあ、どこか分からないでしょ?!」
「これが、限界です…。」
「地図は、私が書くわ…。」
「ごめん…。」
 地図は、Mちゃんに任せた。
 「これで分かるでしょ!!」
「すごーい。」
「じゃあ、今度は、これで、いこう!」
 あたしは、YTに何度だって、会いたくなった。 数日後ー。
 Mちゃんは、何とかして、離婚しようと、勝手に、離婚を進めようとしていた。
 離婚後の住むところを確保するため、市内の不動産を何社か回った。
 だけど、即入居希望の無職という事で、貸主達は、何色を示し、中々、借りれずにいた。
 そんな中、1件だけ、大家さんが、直々に「会う。」と言ってくれた、物件があった。
 あたしとMちゃんは、即座に会いに行った。
 会ってはくれたものの、何色を示してるのは、直ぐに分かった。
 大家さんは、即入居の理由を聞いてきた。
 Mちゃんは、「実父の暴力。」と答えた。
 次に、連帯保証人の話になった。
 連帯保証人は、1番、何色を示された。
 何とか、契約を結ぼうと、あたしは、奮起し、「連帯保証人は、あたしがなります。」と言い、親の話をした。
 あたしの親は、教職なので、それを言うと、大体、物事が通った。
 今回も、それで、家を借りれたようなもんだった。
 Mちゃんは、大喜び。
 荷物を持ってきて、引っ越しをした。
 だけど、家電なし、カーテンなし、かなり、質素な生活だった。
 この頃から、Mちゃんが、あたしを、洗脳し始めた。
 Mちゃんは、ペンダントを使って、ペンジュラムで、物事を決めていた。
 Mちゃんが、初めにしたのは、自分の家に、あたしを住まわす事。
 そして、「誰からの連絡も、Mちゃんの許可なしで、取っては、いけない。」だった。
 更に、Mちゃんは、自身の周りも、連絡を取らなくなった。
 Mちゃんは、毎日、あたしに、YちゃんとKちゃんの悪口を言ったり、あたしに、「私は、家族より、友達より、あんたを取ったんだから、感謝しなさい!!」とか、「あんたの家族から、あんたを守っているのは、私なんだから、感謝しなさい!!」と言われていた…。
 四六時中、Mちゃんと過ごすようになり、自分の意見も言わせてもらえなくなった。
 結果、あたしは、段々と、思考が麻痺していき、Mちゃんの支配下に置かれていった。
 そんな、ある日、警察から、Mちゃんのスマホに電話がかかってきた。
 誰とも、連絡とらなくなった、Mちゃんに対し、家族が、捜索願いを出したのだ。
 あたしは、「連絡…取ったほうが…。」って言ったら、「ペンジュラムは、「連絡を取るな。」って出てるから。」と、聞かなかった。
 捜索願いを出されても、Mちゃんの頭の中は、SIしかなかった。