黒い桜の花は、散ることしか知らない(上)

 次の日ー。
 おばちゃんは、容体が少し安定し、ICUに入った。
 「(一般病棟に移ったら、見舞いに行こう。)」あたしは、そう思っていた。
 それを、Mちゃんは、ぶち壊した…。
 「今から、病院に来て。」
「おばちゃん、ICUから出れたの?」
「ううん。
まだよ。
だから、来て欲しいの。」
「どういうこと?
ICUは、家族じゃなきゃ、入れなのよ?」
「分かってる。」
「あっ、ICUの待合いで待っててってこと?」
「ううん。
家族のフリして、一緒に入って。」
「は?!!
(この人、何言ってるの?)」
 あたしは、訳が分からなくて、パニック状態。
 でも、行かなかったら、何かしでかすと思った。
 あたしは、仕方なく、病院に行った。
 行くと、まずは、販売機のある、休憩室に行かされた。
 そこで話したのは、SIのことばかり…。
 「いつになったら、SIに会えるの?」とか、「SI は、私のこと、どう思ってる?」とか、「SI に会いたい。」などなど…。
 「(お前は、SI で出来てるのか?)」と思うくらい、SI のことばかり…。
 それから、本当に、ICUに連れて行かれた…。
 「(本当に入らされた…。)」
 入ったはいいが、そこら中で、見えてしまう、もう直ぐ亡くなる人達…。
 吐き気を抑え、おばちゃんのところへ…。
 緊急手術した割に、おばちゃんは、体調が良かった。
 まだ、何を話してるのか分からなかった。
 だけど、誰が来たのかは、分かっていた。
 あたしは、ICUを出て、Mちゃんが、話しかけてきた。
 「お母さん、どうだった?」
「「どうだった。」って?」
「死なない?
死ぬ?」
「(ろくなこと聞かない…。)」
 あたしは、ため息が出そうになった。
 「大丈夫。
死ぬような感じは、感じなかった。」
「良かったぁ!!
やっぱり、えりちゃん連れてきて良かった。」
「(知りたかったのは、それ?)
(緊急手術の時は、SIのとこに行こうとしてたのに…。)」
 あたしは、もうすぐ死ぬ人達に会って、力を使いすぎて、疲れてしまった。