黒い桜の花は、散ることしか知らない(上)

 2014年12月ー。
 この頃のMちゃんは、実弟宅に居たり、実家に居たりして、夜中は、自由だった。
 そんな中、Mちゃんが、「S2店に行く。」と言い出した。
 そして、S2店には入れない、あたしにこう言った。
 「SE君に会った時ように、名刺を一枚作って。」と言われた。
 あたしは、「(何で?)」と思った。
 YTに会えるわけじゃないし、店に入るわけにいかないから。
 それでも、1枚だけ名刺を作った。
 それから、それを持って、Mちゃんを店に送り、あたしは、近くの道に車を置いた。
 しばらくすると、YTが、店から出てきた。
 そして、そのまま、コンビニに入った。
 あたしは、「チャンス!」とばかりに、コンビニに行った。
 あたしが、商品を選んでるフリをしながら、YTを待った。
 トイレから出てきた、YTは、あたしを見つけ、驚いて固まっていた。
 「え…っ…、えっちゃん…?」
名前を呼ばれ、振り向いた。
 「えっちゃんっっ!!」
 コンビニ内とはいえ、一目もはばからず、いきなり、抱きしめられた。
 「(えっ!!)
(こんな、公共場で?!!)」
 あたしは、嬉しさで、固まった。
 少し離れ、YTの顔を見た。
 YTは、満面の笑みだった。
 「YT…。」
「えっちゃん…。」
 YTは、再び、あたしを抱きしめた。
 あたしは、再び、離れた時、YTが、話しかけてきた。
 「今日、お店に来る?」
「ううん。
指名変えしたいと思って…。」
「それは、Mに悪いよ…。」
「いいの。」
 あたし達は、また、抱きついた。
 でも、ドキドキが聞こえないか、不安で。はなれては、抱きしめられたくて、また、抱き合う。
 何度も、繰り返した。
 コンビニで会って、どれくらい経っただろう…。
 誰にも、邪魔されることなく、逢瀬の時を楽しんだ。
 そして、あたしは、作ってきた名刺を、ポケットから、取り出した。
 「これ…あたしの名刺…。」
「えっ…。
高橋 りの…?」
「あたしの源氏名。」
「そうなんだ。」
「持ってて。」
「うん。
指名変え出来るまで、大事に持っておく。」
 YTは、大事に胸ポケットに、入れてくれた。
 YTは、あたしのことを、また、抱きしめた。
 「(YTのお客さんが、羨ましい…。)
(YTの声が、何度も聞けて…。)
(YTと連絡が出来て…。)
(堂々と、YTに会えて…。)
(YTに抱きしめられて…。)」
 YTとあたしは、コンビニを出た。
 YTは、大きな声で、「えっちゃん、バイバイ。」と言ってくれた。
 叫ぶ、YTの方を見てみると、コンビニの外で、ずーっと、待っていた、女の子と一緒だった。
 「(えっ…。)
(自分のお客さん、待たせてたの?!!)
(寒い中、外で、待たせていたの?)
(挙句に、笑顔で「ばいばい。」?)
(大丈夫なの?)」
 YTと別れた後、すぐに、Mちゃんにlimeした。
 「YTに会えたよー!!
ありがとう!!
名刺も渡せたー。」
「会えた?!!
良かった!!
もう少ししたら、チェックしてもらうわ。」
「分かった。」
 本当に、少しして、Mちゃんは帰ってきた。