黒い桜の花は、散ることしか知らない(上)

 次の日ー。
 あたしは、S2店に電話した。
 「M指名のえりです。
S居ますか?」
 電話に出た人は、Sではなかったらしく、Sを呼んでくれた。
 「お電話代わりました、Sです。」
「えりです。
情報誌、見ました。
指名変えさせて下さい。
もし、させてくれたら、他店には行きません。
お願いします。」
「指名変えについては、俺だけでは、決められないから、5分後に、もう一度、電話くれる?」
「分かった。」
 この会話だけでも、何時間も話した気がした。
 実際は、10分も話したか?ってくらいだった。
 5分後、あたしは、もう一度、S2店に電話した。
 また、Sを呼んでもらった。
 「5分経ちました。
指名変え…。」
「指名変えするには、条件がある。
1、担当と連絡を取らない。
2、3月の終わりまで、お店に来ない。
これが条件。」
「分かった。
じゃあ、3月の終わりに、電話する。」
「分かった。」
 あたしは、電話を切り、顔は見なくても、ニヤけてるのが、分かるくらいだった。
 「(3月の終わりまで…。)
(そうすれば、YTを指名できる!!)」
 この時は、出来ると思っていた。
 何故なら、好きな人に会えないと言うことが、どれだけ、ツラいことか分かってなかったから。