黒い桜の花は、散ることしか知らない(上)

 次の日ー。
 「何で嘘付いた?」
 この日は、Mの怒りから始まった。
 「R店には、1人で行く。」と嘘をついたから。
 「俺、嘘つくやつ嫌い。」
「ごめん…。
SI にバレたら、Mちゃんが、怒られると思って…。」
「そんなの言ってみないと、分からないでしょ?!!」
「はい…。」
「もう二度と、嘘つくなよ?」
「うん。
分かった。
ホントに、ごめんね…。」
「もういいよ。
分かってくれたんなら。」
「あと…。」
「あと…?」
「Yちゃんから聞いたけど、勝手に、アフターしようとしたそうで…?」
「うっっ…。」
 言葉に詰まる、M。
 3、2、1。
 「この際だから、はっきり言うね?!
あたしは、Mの事、ホストとしてかしか見てません!!
大切な、プライベート時間を、ホストに割く気もありません!!
だから、店の外で、会う気は、さらさらありません!!
それに、Mとのlime、あたしは好きよ?
恋愛感情がないから、仕事の話が出来るし、仕事の事で、助言出来るのも、Mだけだし、あたしは、楽しいよ?」
「でも、仕事の話だけって…。」
「夜の仕事ってね、得るものは沢山あるよ?
勿論、お金もそう。
頑張った分、返ってくるでしょ?
それ以外にも、あるでしょ?
接客術に関しては、かなりの技術がいると思と、あたしは、そう思ってる。
後、人を見る目だとか。
でも、営業方法に関してだけは、夜職でしか、活かせられないでしょ?
だから、Mとのlimeは、好きなの。
それから、Mのプライベートは、お金を使ってくれる順に、時間を使いなさい。
お酒を飲んで、しんどい思いして、1週間で唯一の休みを、あたしに使わないで。
あたしは、そこまでしてもらえる価値ないから。」
「…分かった…。」
 Mは、そのまま、ヘルプに行った。
 この日、Yちゃんは、かなり、疲れてたのか、寝てしまった。
 「(Yちゃん、寝ちゃった…。)
(どうしよう…。)
(ひざ掛け、借りようか…。)」
 なんて考えてたら、R君が来た。
 「Yちゃん、寝たの?」
「うん…。」
「ひざ掛け持って来ようか?」
「お願い。」
 Rは、ひざ掛けを持って来てくれた。
 しかし、Rが、Yちゃんに、ひざ掛けをかけようとすると、ガバッと起き上がる、Yちゃん。
 あたしもRも、ビクッとなった。
 起きた、Yちゃんは、寝ぼけながら、Aのことを聞いてきた。
 あたしとRが、「帰ってきてないよ。」と言うと、また、寝た…。
 その繰り返しを何度かし、Yちゃんは、起きた。
 あたしは、そのYちゃんに、「コンビニに行こう。」と言った。
 Yちゃんと、コンビニに行く途中、YTが、DJブースに居たので、コンビニに行く事を伝えた。
 「YT。
コンビニ行ってくる。」
「待って!!
1人で行くの?!」
「ううん。
Yちゃんと。」
「ならいいよ。
気を付けて行くんだよ?」
「うん。」
 あたしは、前を向いて、歩き出した。
 すると、いきなりの壁ドン!!
 驚いたあたしは、叫んだ。
 よく見ると、壁ドンしてきたのは、M。
 「(何なの?)」と思っていたら、Mは必死の顔をして、あたしの肩を掴んだ。
 「どこに行くんだよ?!!
俺を置いて!!
帰るのか?!!
帰るなよ!!
俺を捨てるのか?!!
捨てないでくれ!!!」
「(わぁーーー…。)
(すごい事言ってる…。)
(これ、記憶あるのかな…。)
こ…コンビニに行くだけよ。」
「ホントか?!!
帰ってくる?!!」
「帰ってくるわよ。」
「早く、帰ってきてくれる…?」
「はいはい。」
「絶対だぞ?!!」
「分かったから、仕事して!!」
 Mは、渋々と仕事に戻った。
 あたしとYちゃんは、コンビニに行って、サッサと帰った。
 あたしが、買ったのは、エビのビスクとおにぎり。
 ホクホク気分で、席に座り、スープを取り出し、飲んでいると、YTが、ヘルプにきた。
 あたしは、YTとスープを飲み合いっこした。
 「YT、スープ、美味しい?」
「うん。」
 YTは、ニコッと笑った。
 「(この笑顔に弱いのよ…。)」
 Yちゃんは、食べるだけ食べて、また、寝た。
 すると、YTは、おしぼりで、何かを作り始めた。
 「出来た!」
 YTが、そう言って、渡してくれたのは、おしぼりで出来た、うさぎ。
 「えっちゃん。
俺がいないと寂しい?」
「うん。」
「じゃあ、はいっ!!」
「わああああ…。
うさちゃんー…。」
「寂しくなったら、このうさちゃんを、俺を思って、話しかけて。」
「うんっっ!!
ありがとう!!」
 Rは、その様子を見て、驚いた。
 「すげぇ…。
SEさん、うさぎ作れるんですね。」
「これだけ、作れるんだ。」
 照れる、YT。
 「うさちゃーん!!」
 あたしは、ニコニコしいていた。
 「えっちゃんに喜んでもらえて、嬉しいよ。」
 ここで、YTは、呼ばれ、席を離れた。
 だけど、それは、隣の席で、あたしが、ガッツリ見えるとこだった上に、ガッツリ見れる位置に、席を置いて、お客と話していた。
 ヘルプに行っても、あたしのことを、ガン見のYT…。
 あたしの席から、Rが離れると、代わりにRUが来た。
 RUが、あたしの席につくのは、初めてだった。
 「そのうさぎ、どうしたの?」
「わ…SEが、作ってくれた。
(YTって言っても、分からないよね…。)」
「へぇ、良かったな。」
「うん!」
「大事に持ち帰らないとね。」
「うん!!」
「そう言えば、SE君のこと、YTって呼んでるの?」
「うん。」
「何で?」
「本名いじって…。」
「あ〜、そう言うことか!」
「うんっ!!」
 すると、RUが手を見せてくれた。
 「俺、手ぇ、デカいんだよ。」
「そうなの?」
 あたしとRUは、手の比べっこをした。
 RUの手は、本当にデカかった…。
 そんなやりとりを見ていた、YT。
 颯爽と、あたしの席にきた。
 「RU、どいて。」
 その顔は、ムッとしていた。
 RUとあたしは、ビックリ。
 「えっ…。
SE君、ここ?」
「そう!
ここ俺だから。」
 あたしは、ニッコリ微笑んで、YTを迎えた。
 「おかえりー!!」
「ただいま!!」
 この時、YTは、まだ、ムッとしていた。
 そのYTに、あたしは、手の比べっこをしようとした。
 「YTも、手の大きさ比べよ?」
「俺、手ぇ、小さいから…。」
 まだ、ムッとしていた。
 「いいじゃん。
しようよ。」
「じゃあ…。」
 あたしは、YTの手を比べた。
 「YTも、大きいじゃんっ!!」
「そっ…そうかな…?」
「うん!
大きいよ。」
 YTは、やっと、ニコニコにいなった。
 手を握り合って、Love Love。
 「YT、おにぎりあげる。」
「わぁ〜。
ありがとう。
後で、食べる。」
 ポケットに、おにぎりを入れあ、YT。
 そこに、Mが帰ってきた。
 「SE君、どけて!!
通れない!!」
「あっ…ごめん…。」
「えり、ごめん!
中々、つけれなくて…。」
「別にいいよ。
YTが、居てくれたから。」
「あっそ!!
SE君、もういいよ。
あっち行って。」
「あっ…うん…分かった…。
えっちゃん、ご馳走様。
はい、タバコ。」
「うん。
また、後でね。」
「うん。」
 チラッと、Mを見ると、ベロベロ状態…。
 「だいぶ、酔ってる?」
「うん…。
自分の席で、飲んでる…。
お…お茶…取ってくる…。
待ってて。」
「うん。」
 あたしは、この時、「よく頑張ったね。」の意味を込めて、手を握った。
 だけど、すぐに、手を離された。
 その上、また、自分の飲み席に戻って行った。
 この日は、もうすぐ、営業終了というところで、シャンパンコールが、鳴り止まなかった。
 流石に、眠くなって、コール中に、眠ってしまった。
 起きてみると、YTのタバコがなくなっていた…。
 「(YTのタバコ…。)」
 タバコの置いてあった、場所をじーっと見ていると、Yちゃんが、声をかけてきた。
 「あっ…起きた?
タバコ、SEちゃんが持って行ったよ。」
 そこに、YT登場。
 「あっ!!
起きてる!!」
 むぅぅぅぅぅっとなる、あたし。
 「YTーーーー…!!
た・ば・こっっ!!」
「そんなに怒らないでよ…。
置いて行くから…。」
 やっと、帰りの時間になった時、AがYちゃんの事を怒り始めた。
 「お前、寝るなよ!!
俺を助けに来てんじゃないのかよ?
寝られたら、席に戻れないんだよ!!」
「ごめんなさい…。」
 あたしは、YTが戻ってこなくて、YTのタバコを持って帰った。