黒い桜の花は、散ることしか知らない(上)

 11月の初めー。
 Yちゃんと遊んでいたら、Aから、Yちゃんに電話があった。
 「Yちゃん、Aから電話…。」
「スピーカーにしてくれる?
運転中だから。」
「OK!!」
 あたしは、言われた通り、スピーカーにした。
 「何してんの?」
「えりと遊んでる。」
「今日来たら、写真あげれるんだけど?」
「えっ!!」
「えりと来ればいいじゃん。」
「あたしぃ〜?!」
「なんだよ。
いやなのか?」
「だって…。
(YTのが貰えるわけじゃないし…。)」
「ちょっと待ってろよ?」
「(どうせ、Mに代わるんでしょ?)」
 Aのことを待ってたら、いきなり声がした。
 しかも、Mじゃなく、優しい声のYT…。
 「YT?!!」
「あー、えっちゃん。
今日、おいでよ。
俺つくし。」
「で…でも…、YTの写真貰えないでしょ?」
「俺のがいいの?」
「うん!!」
「いいよ。
あげる。
だから、おいで。」
「分かったぁ!!」
 Yちゃんと2人、S2店に行った。
 中に入ると、YTが迎えてくれた。
 「いらっしませ〜。」
「YTっ!!」
「ほらね。
待ってたでしょ?」
「うん。
あっ、そうだ、写真!!」
「写真ね。
待ってて。
あっ、大きいのと、小さいのと、どっちがいい?」
「大きいの!!」
「分かった。
待ってて。」
 あたし達は、席に案内され、YTは、写真を取りに行った。
 「はい。
えっちゃん。
これが、大きいやつ。」
「ありがとう!!
(YTの写真ー!!)
(やったー!!)」
 YTの写真を、大事に抱きしめる、あたし。
 そんな、あたしを見たあ、M。
 「SE君にもらったんだ?」
「うん。」
「じゃあ、俺のは要らねえな?
1人1枚だから。」
「うん。
要らない。」
「あっそっ!!」
 何故か、不機嫌になる、M。
 「(あたしが、YTのこと好きなの知ってるくせに…。)」
 あたしが、YTの写真を持っていたら、S2店のみんなから、いじられた。
 それでも、YTからもらった写真を抱いていた。
 すると、YTが、気付いて、慌てて言った。
 「えっちゃん!
隠してぇー!!」
「隠してって言われても…。
(バッグ、小さいし…。)」
 あわあわのYTとあたし…。
 それを見て、S2店のみんなは、楽しそうにしていた。
 「そんなに、SEのこと好き?」
「うん!!
大好きっつ!!」
「だって、SE!!」
 YTは照れまくり。
 「えっちゃーん…。」
 S2店のみんなが、居なくなり、YTが、ヘルプについてくれた。
 「YT、見て見てぇ〜。」
「あっ、AP!!
じゃあ、俺も。
…ノート取ってくる。」
「うん。」
 ノートを持って来て、2人で、お絵描きした。
 「YT、めっちゃ、絵、上手いね。」
「そう?
まぁ、得意だしね。」
 そうこうしていたら、Mが帰って来た。
 「SE君、あっち行って。」
「うん。
分かった。
はい。
えっちゃん、タバコ。」
「うん。
ありがとう。」
 いつも通り、タバコを置いて行ってもらった。
 「なに?
タバコもらったのか?
吸うの?
灰皿いる?」
 質問攻めのM。
 「ううん。
これは、帰って来て欲しいから…。」
「はぁ?!
何だよそれ!!
それで、あいつ置いて行ったわけ?!」
「うん。
意味は、分かってないと思うよ…?」
「ふーーーーん…。」
 テーブルに目をやる、M。
 そして、YTの絵を見つけた、M。
 「これ、あいつが書いたのか?」
「うん。」
「ふーーーん…。」
「めっちゃ、上手いよね?」
「そうでもねぇよ!!」
 そう言って、YTの書いた、絵をポイッと捨てた。
 「(あー…。)
(YTの絵…。)
(持って帰ろうとしてたのに…。)」
 YTの絵を捨てて、落ち着いた、Mは、あたしに、お願いをして来た。
 「あのさ…。
お願いがあるんだけど…。」
 絵をポイッとされたことで、ムッとなったあたしに、何事もなかったかのように、お願いしてkる、M…。
 一応、お願いを聞いてあげることにした。
 Mの願いは、名字考えて欲しいということ。
 希望は、最初の文字が、「アかSで始まるのがいい。」と…。
 元々、そう言うのを考えるのが、好きだったので、承諾した。
 いつもなら、すぐに、浮かぶのに、中々、浮かばなかった。
 名前を考えるのに、一生懸命で、YTがついてくれてることに、気付かなかった。
 「何を、そんなに考えてるの?」
「あぁ…、YT…。
Mの名字を…。」
「Mの名字?」
「うん。
考えてって言うから…。」
「えっ!!
じゃあ、俺のも考えてよ!!」
「えっ、いいの?!」
「うん。」
「分かった。」
 YTの名前は、すぐに浮かんだ。
 だけど、1番肝心のYTが、席を離れたまま、帰って来ない…。
 目配せで、YTを呼び、ほんの少しだけ、帰って来てもらった。
 その時間、3秒くらい。
 YTに、名字を見せたのは、これ一回だけ。
 だけど、気に入ってくれて、使ってくれることになった。
 使うとなれば、上司の承諾が要るので、すぐにすぐは、出来なかった。
 YTは、Mの似顔絵を描き始めた。
 書いてる最中、ずっと、YTの手を握っていた。
 そこに、Mが戻って来た。
 「SE君、自分の指名じゃないのに、手を握るのは、爆弾なんだけど?!!」
「あっ、ごめん…。
えっちゃん、俺、回ってくる。
多分、中々、帰ってこれないから、タバコ持っていくね?」
「う…うん…。」
一度はいいと言ったけど、寂しくなった、あたし。
 lastの挨拶の時間…。
 あたしは、YTを捕まえた。
 「YT…。」
「どうしたの?」
「YTが居ないと、寂しい…。
居てよ…。」
 泣き顔で、無理なお願い…。
 「分かった。
待ってて。」
 YTは、ダッシュで、挨拶をして戻って来てくれた。
 「ただいま。」
 そう言って、あたしの1番近くに座る、YT。
 「おかえりなさい。」
 あたしは、笑顔で出迎えた。
 でも、戻ってくるなり、YTは、タバコを探し始めた。
 「えっちゃーん。」
「ん?」
「タバコが…見つからない…。」
「えー?」
「えっちゃん。」
 ハニカミながら、1本頂戴のジェスチャー。
 「えー…。」
「えっちゃん、俺、特別でしょ?」
 悪戯っぽく微笑む、YT…。
 「(その笑顔は、ズルイ…。)
そうだけど…。」
「その為のお揃いでしょ?」
「そうだけど…。」
「じゃあ…。」
 再び、微笑む、YT。
 「(微笑むなんて、ズルイよ…。)
もぉ…。
じゃあ、はい。」
「ありがとう。」
 YTは、ニコニコ受け取り、吸いだした。
 YTが、タバコ吸ってる間も、手を握り合っていた。
 「(ダメなの分かってるけど…。)
(止められない。)
(このまま、時間が止まれば…。)」
 YTが、タバコを吸い終えると、Mが帰って来た。
 「あーあ、M帰って来たよ…。)」
 Mは、ヘルプ席に座る、YTの脇を抱え、ヘルプ席から、引きずり落とした。
 「YTーっ!!!」
「えっちゃーん!!」
 それを見た、M Iが、一言。
 「ロミジュリか!!」
 Mに引きずりおろされた、YTは、ソワソワし始めた。
 「えっちゃん、タバコ探してくる。」
「分かった。
早くね。」
「うん。
分かった。」
 YTは、すぐに帰って来てくれた。
 「えっちゃーん。
あったぁー!」
「良かったね。
じゃあ…。」
 1本返してのジェスチャー。
 「えー…。
仕方ないなぁ…。
もお…。」
「あったんでしょ?」
「わかったよぅ…。」
 タバコを返してもらった。
 それから、MIとMとYTと少し話しして、帰ることになった。
 この日も、YTに送り出してもらった。