黒い桜の花は、散ることしか知らない(上)

 ある日、MちゃんとS2店に行った。
 席に通されると、Tが、不敵な笑顔で来た。
 「な…、なに…?」
「俺は、この日を待っていた…。」
「えっ…。」
 Tは、ヘルプ席に座った。
 「さぁ、ゲームの始まりだ!!」
「はい…?」
「俺は、この日の為に、訓練を積んだんだ!!
覚悟しろっっ!!」
「いや…。
やるって言ってないし…。」
「これ、強制だから。
断ること出来ませーん!!
ってことで、やるぞ!!」
「断る権利くらいあるでしょ!!」
「ないっっ!!
始めるぞ!!」
「えーーーー…。」
「俺から、始めるぞ!!」
 そして、始めたゲーム…。
 前回と違ったのは、あたしがボロ負けしたこと…。
 それでも、ここぞとばかりに、勝負をしようとする、T…。
 「(ダメだ…。)
(勝てない…。)
(どうしよう…。)
(このままじゃ、酔ってしまう…。)
(酔うとキス魔になってしまうのに…。)」
 あたしは、気付くと、1人の名前を呼んでた。
 そう、YT。
 あたしの声は、小さい…。
 店の音は、大きい…。
 どこいいるか分からない、YT…。
 届くはずなかった…。
 あたしは、下を向いた。
 そんなあたしの前に、人影が…。
 「どうしたの?」
 聞き覚えのある、優しくて、温かい声…。
 あたしは、人影にの方を見た。
 そこに立っていたのは、YTだった…。
 「YT…?
YT…!!」
「どうしたの?
えっちゃん。」
 あたしは、YTに泣きついた。
 「Tが…。
Tが…。」
「Tがどうしたの?」
「ゲームでいじめる…。」
「ゲーム?」
「うん…。」
 YTは、テーブルの上に、並ぶスカイを見た。
 「えっちゃん…。
これだけ飲まされたの?
一気飲み…?」
 あたしは、頷いた。
 「T!
俺と勝負しよう!!」
「俺は、色んな所で、練習したんだ!!
YTにも勝てる!!勝負だ!!」
「えっちゃん。
見てて。
勝って見せるから!」
 結果は、YTの圧勝!!
 「くっそぉーっ!!
SEには、まだ、勝てねーか!!
修行してくる!!」
「いってらっしゃーい。
まぁ、俺には、まだまだ、勝てねーだろけど。」
 YTは、ニヤリと笑って、Tを見送った。
 その後で、あたしの方を見た。
 「えっちゃん。
仇取ったよ。
もう、大丈夫。」
 そう言って、優しく微笑んだ。
 全てを見ていた、Mちゃん。
 「本当に、SE君、えりちゃんの声聞こえるんだ…。
どんなに小さくても、どんなに遠くにいても。
すごいね!!」
「えっ…。
そうかな…。」
「そうだよ。
えりの声、小さいもん。」
「まぁ…、そうかも…。」
 あたしは、あたしの声で、来てくれた、YTの事が、本当に、好きだった。