黒い桜の花は、散ることしか知らない(上)

 Yに、「今月は、ボウズなしにします。」宣言してから、ずーっと、頑張ってきた、M…。
 そのMから、夜中に、limeがきた。
 「えりーーーーっっ!!
起きてる?!!!
寝てたら、起きてーーーっっ!!」
 ちょうど、寝かけていたあたしは、機嫌が悪かった。
 「起きてるけど?
なんの用?!!
(眠い…。)」
「起きてたーーーー!!
やったーーーーー!!」
「(何?)
(この喜びよう)
(イヤな予感…。)
(今度は、何した?!!)」
「あのさ…。
今日、予定してた人と連絡が、取れなくなった!!!」
「はああああああああ?!!」
 一気に、目が覚めた、あたし。
 あたしの怒(いか)りが伝わったのか、一生懸命、説明し始める、M…。
 「いや…。
さっきまで、limeしてたんだけど、「眠い。」って言われてから、返信がなくなった…。
どうしよう…。」
「さっきって、どれくらい前?」
「えっ…。
えーっと…。
2時間前くらい…。」
「寝たな…。」
「やっぱり…?」
「(「やっぱり。」じゃないわよ!!)
もうっっ!!!
なんで寝かすかなぁ?!!!」
「だって、あんまり、limeするなって…。」
「臨機応変って言葉、知らないの?!!」
「すみません。」
「ま…まさか…。
予定、その子だけ?
違うよね?」
「その子だけ…。
今からじゃ、誰も捕まらなくて…。」
「当たり前でしょ?!!」
「ごめんなさい…。」
「ったく!!」
「で…言いにくいんだけど…今から来て下さいっっ!!」
「でしょうね!!!
行ってあげるから、待ってなさい!!!」
「はい…。」
 とは言ったものの、連日の疲れから、爆睡してしまった…。
 目が覚め、慌てて、スマホを見ると、6時…。
 すぐに着替えて、バッグを持って、S2店に向かった。
 店内に入ると、入り口のすぐ近くで、MとSが、話していた。
 Mは、入り口に、背を向けたいたので、あたしに気付かなかった。
 あたしは、Sに、秘密の合図を送った。
 そして、Mにバッグで、軽く一撃。
 「わああああっ!!」
 叫ぶMに、冷静な挨拶。
 「おはよ。」
「お…おはよう…。」
 Mは、殴られたとこを、さすりながら、答えた。
 「もう、来ないかと思った…。」
「ごめん。
寝てた…。」
「嘘っっ!!!
寝てた?!!」
「うん。
起きれたのが、奇跡…。」
 あたしは、「ははは。」と笑った。
 「いや…。
笑い事じゃ…。
俺、危なぁっっ!!
お前が来なきゃ、ボウズだし…。」
「来たんだからいいでしょ!!」
 席に案内されると、SIが来た。
 「えーーー!!
なんで、えりが、来てんだよ!!
これで、今日、ボウズなの俺だけじゃん!!」
「そうなの?」
「仲間だと思ったのにっ!!
Mの裏切り者ーー!!」
「まぁまぁ、怒らずに…。
あたしも来れたの奇跡だし…。」
「奇跡?
なんで?」
「あたし、寝てたの。
「Mに行く。」って言った後、寝ちゃって、起きれないかと思った。」
「えりが来なかったら、Mは仲間だったのに…。」
「なんか、起きれちゃった。」
 あたしは、笑った。
 「でも、すげぇよな。
ちゃんと、起きて来てくれるんだから。
優しい奴だ。」
「そう?
ありがとう。」
 SIと入れ替わりに、Mが帰って来た。
 「今日は、本当に、ありがとうな。」
「この貸しは、デカいよ?」
「やっぱり?」
「当たり前。」
「はい。」
「ホント、手のかかるっ!!」
「でも、来てくれるんだから、えりは優しいよ。」
「それ、SIにも言われた。」
「マジで?」
「うん。」
「まぁ、これからも、よろしくお願いします。」
「無理です。」
「なんで?!」
「お金ないもん。
出してくれるならいいけど、出さないでしょ?」
「うん。
出さない。」
「でしょ?
だから、無理。」
「お前さぁ。
「出せ、出せ。」言うけど、誰が出すか、分かるのかよ?」
「何となくなら…。」
「じゃあ、誰?」
「YT!!」
「絶対ない!!
あいつ、金ないもん!」
「いや。
YTは、出すよ。
あの人は出す!」
 「何となくしか分からない。」と言ったのに、YTに関しては、自信満々で答えた。
 送りの時間が迫って来た時、ダメ元で、Mに本名を聞いた。
 「そうそう。
Mの本名は、何?」
「本名?!!
店の誰も知らないんだけど…。」
「じゃあ、誰にも言わない。」
「でも、ここで言うには…。」
「じゃあ、打ち込んで。
はい。」
 あたしは、スマホをMに渡した。
 「はい。
打ち込んだよ。
誰にも言うなよ?
本当に誰も知らないんだから。」
「分かってるってば!」
 Mの本名、GET!!