「あなたの誕生日は5月ではありませんか?」
 「………え……はい。そうですが、どうしてそれを知ってるの?」
 「………少し早いですが、私から紋芽さんに誕生日プレゼントを贈ります」


 突然誕生日の話を始めた樹に、菊那と紋芽は目が点になっていた。何故急に誕生日の話になり、そして何故彼の誕生日がわかったのか。質問したい事は山ほどあった。
 けれど、当の本人は優雅に自分で入れたストレートティーを一口飲んでいた。
 
 そして、受け皿に戻すと膝の上で手を組んで話の続きを始めた。


 「明日、チョコレートコスモスの花束をプレゼントします。また、この屋敷にいらしてください。もちろん、先日持って帰った私の花もお忘れなく」


 樹は、そう紋芽に提案し自分の願いもしっかりと伝え、その日を終えたのだった。
 少し厳しくも優しい彼の対応に、菊那はただ見守る事しか出来なかったな、と自分の不甲斐なさを感じ、トボトボと帰り道を歩いたのだった。