「そんなに庭が気に入りましたか?」
 「え、あ、はい………。あまりにもたくさんの花の種類ってどれぐらいあるのかな?と思ってしまって」
 「………なるほど………」


 樹は戻ってくると、真ん中に色とりどりのフルーツが入ったロールケーキとミルクティーを菊那の前に置いた。樹はミルクティーだけのようだ。菊那は「ありがとうございます」と、甘い誘惑についつい笑みを浮かべてしまう。


 「菊那さんは、薔薇の種類がどれぐらいあるかご存知ですか?」
 「え、種類ですか?………いろんな色や形があるのは知ってますが………数百ぐらいですか?」


 突然の質問に驚きながらも、自分の知っている薔薇を思い浮かべながら、菊那はそう答えた。
 すると、樹はニッコリと笑って人差し指を顔の横に置き「正解は」と、先生のように言った。そう言えば彼は教授なのだ。


 「薔薇の品種は約4万種あると言われています」
 「そんなに、ですか!?」
 「えぇ。ですから、この庭にある花たちはほんの僅かしかないんですよ。薔薇だって、30種あるかないかですから」
 「薔薇だけでそんな種類があるんですね」


 菊那は驚いて、庭にある薔薇を上から見つめた。花びらの大きさや数、葉や茎と少しの違いで花の雰囲気も変わり、名前も変わるのだろう。新しい発見に、菊那はそんな風に今まで見てきた薔薇を思い浮かべた。まだまだ出会っていない薔薇も、その他の花もたくさんあるのだ。