クラスメートの女子たちは、イケメンな光貴に見惚れ、そんな話をすることもある。しかし、男性恐怖症の莉奈は何も興味がなく、友達の話にはとりあえず「そうなんだ」と相槌を打っていた。

光貴とは一年生の時に同じクラスになり、莉奈はビクビクしたものの関わることはなくホッとしていた。そして、二年生の時にはクラスが離れ、莉奈は「これで安心して学校生活が送れる」と思っていたのだ。あの時までは。

「莉奈ちゃん、光貴くんが呼んでるよ」

二年生になってしばらくした頃、お昼休みに料理のレシピ本を読んでいた莉奈は友達に羨ましげに言われた。大抵の女の子なら目を輝かせただろう。しかし、莉奈は違う。

「えっ?光貴くんが?」

莉奈が顔を挙げれば、教室のドアの近くに立っている光貴と目が合う。その刹那、莉奈の心臓は大きく跳ね上がり、体が小刻みに震えた。

えっ?私、何かしちゃったっけ?光貴くんとは関わってないはず……。私、今から呼び出されて何されるの?まさか、殴られたり蹴られたり……?