「忘れ物ないですかー?出発しますよー」

今日、水族館まで車を走らせてくれるのは瀬川。

助手席に看護師、後部座席に俺となつを乗せて車は発車した。

無機質な街中の病院から、海辺の水族館まで、所要時間は一時間程だ。

なつは終始るんるんで、窓の外の景色を眺めはしゃいだり、今日楽しみにしていることを沢山教えてくれた。

一時間もあるし、着くまでに寝てしまうかな、とも思っていたけど全くの杞憂で、水族館に着くまでぱっちり目を覚ましていた。

「着きましたよー」

「わーい!ひろくん、ついたって!はやくいこう!」

水族館に着いたことでなつのテンションはさらに上がる。

今にもジャンプしそうな勢いだ。

「早く行くのわかったし、楽しみなのもわかったけど、ちゃんと今日のお約束覚えてる?」

外出出来るとはいえ、なつはまだ病人。

さらに、この前手術を終えたばかりでもある。

だから今日はここに来る前に、いくつかなつとの間に約束事を作っていた。

「おぼえてるよ!んーとね、はしらない、さわがない、ぐあいわるくなったらいう!」

「うん、せーかい。じゃあ、今そっち側のドア開けてあげるから、一緒に行こうな。」

「うん!!」