おまじないの甲斐あってか、約束の日は思っていたよりもすぐに訪れた。

「すいぞくかん!!すいぞくかんっ!!」

朝からなつはこの通りのハイテンション。

病気なんて嘘みたいに、元気な様子を見せている。

「ほらなつ、はしゃぐのもいいけど、行く用意しないと。もう、すぐに瀬川先生きちゃうよ?」

コンコンッ

うわさをすれば、だ。

「おはよー、なつ」

「あ!せがわせんせーおはよー!!」

「うわあ、すごい元気だね。よかった。じゃあ早く出発したいだろうし、行く前の診察しようね。」

「はーい」

いつもは、毎日の回診でさえ文句を言うなつが今日は素直にいう事を聞いている。

それほど、楽しみにしていたのか。

「せんせっ!きょうね、なつね、いるかさんみたい!!あとね、ぺんぎんさんと、おさかなさんと、あざらしさん!」

「うん。なつの見たいもの見に行こうね。じゃあ少しじっとして。動いてたら診察進められないよ。」

「わかった!」

動かないように言われ、背筋をピンと伸ばし、口を結んで耐えているなつ。

しかし、動かないように、と力を入れすぎるあまり、体がプルプルと震えてしまっている。

その様子が面白くて、つい吹き出してしまう。

なつは、自分の様子が面白いのに気づいていないのか、笑った俺のことを見て不思議そうに首をかしげたあと

「ひろくんもたのしみ?」

と笑顔でとんちんかんなことを聞いてきた。

でも、なんだかそれもかわいくて、仕方がないから話を合わせることにした。

「うん。楽しみだよ。」

そういうと、なつの表情はぱあっとより明るくなり、こちらもつられて笑顔になった。