このまま泣きっぱなしだと、ただでさえ術後で体力が減っているのにさらに減らしてしまい予後の体調不良に繋がりかねないと判断し、一度なつをあやして寝かしつけることにした。

なつ自身も疲れていたのだろうか、一度寝ることを提案し、いつものようにお腹をリズムよくさすってあげると、コテンとすぐ眠りについた。

俺もなんだか精神的に少し疲れてしまったから、一度医局に戻って休憩を取ろうと立ち上がって伸びをしながらドアを開けた。

「おわっ!」

「おお……」

ドアを開けた途端目の前にいた人とぶつかりそうになる。

「すいません…って、なんだ、幡也か。」

他の患者さんか看護師さんとぶつかってしまったのかと焦ったが、よくみれば見慣れた顔で拍子抜けする。

「なんだってなんだよ。俺なら謝んなくていいのか?」

そう幡也はムッとした顔をするも、いつものやり取りに、俺はさっきの事で張っていた肩から少し力が抜けた。

「ごめんって、そういう事じゃなくてさ。てか、どうしたんだよ、何かあったか?」

「いや、手術あったって聞いたから、ただ普通になつの様子を見に来ただけ。まだ、寝てる?」

俺は首を横に振って少し振り向き眠っているなつを見る。

「さっきまで起きてたけど、少し疲れた様子だったから1回寝かせたんだよ。」

「そっか。……でも、疲れたって…何かあったの?」

俺の表情から何かを察したのか、幡也は少し怪訝な顔をした。

「……そのことなんだけどさ…」

遅かれ早かれ、さっきのことは幡也には相談するつもりでいた。

元々、幡也が先に気付いてくれたことだし、なにより幡也もなつのことすごく大切に思ってくれているから。

「少し、場所を移動しよう。」

「わかった。」