その時俺は見逃していた

小さな小さな違和感に

俺がそれに気がついたのは、それから数日後のことだった。










「……ひろくん…」

それは普通の日の普通の午後、いつも通りナースステーションでカルテ記入をしている時だった。

「ん?…あれ、なつどうした?」

点滴を引っ張ってナースステーションの前に立っているなつを見つけ驚いて一度手を置きなつの所へ駆け寄る。

「あまりお部屋から出ちゃダメだよって言われなかった?なにかあったの?」

なつのことだから、熱とかで少し頭がふわふわしてあまり正常な判断が出来ずにいるのかもしれないと思いつつ、少し優しめの口調で注意する。

「…ん、ちょっと、ぐあいわるい……、きもちわるくて、ひろくん、いるかなって…」

なつは半べそをかきながらそう言って俺の白衣の裾をキュッと掴んだ。

「そっか、具合悪かったんだね。じゃあ、1回お部屋戻ろうか。瀬川先生にお薬もらえないか聞いてみようね。」

コクリと頷いたなつの手を引いて、なつのペースに合わせゆっくりと部屋へ戻る。

その時、何かひっかかりを覚えた。

なんだ、この違和感。

何かが変だって、確信はないけど何かがおかしいってわかる。

色々可能性を脳内に巡らせる。

なつの声色や表情はいつもと同じ。

急にナースステーションに来たりするから違和感を覚えたのか?

……いや、違うな。

違和感に気付いたのは一緒に歩き始めてからで…………

"歩き始めて"から?